コワーキングオフィスの存在は30年以上前からあったが、17年7月に米大手WeWorkが参入したことで本格的に拡大した。スタートアップや大企業のサテライトオフィスとして徐々に利用が広がったが、新型コロナウイルスの感染拡大を機に、事業者が激増した。
コワーキングオフィスが増えた点について、斉藤氏は3つの理由を挙げる。まずは、オフィスワーカーのリモートワークが増えたことだ。
コロナ禍の外出自粛期間に、リモートワークを余儀なくされたオフィスワーカーが、家族のいる自宅では仕事が難しいので、コワーキングスペースを利用したいニーズが高まったのである。
2つめの理由は、参入事業者の拡大だ。コロナ禍でオフィス利用の需要が蒸発し、事業者が不動産を「貸出」ではなく、「開放」する方向に動き、シェアオフィスやコワーキングオフィスの開発を進めたのである。
三井不動産の「ワークスタイリング」や東急不動産の「ビジネスエアポート」をはじめ、不動産企業のシェアオフィスの拠点開発はその最たる例だ。また、貸会議室大手のTKPは、コロナ禍で貸会議室の利用が減少したことから、貸会議室から貸しオフィスへの転換を加速。コワーキングオフィス「リージャス」への改装を進めている。
異業種の参入も激しい。監査法人・トーマツが東京都のコミュニティースペース「NEXs Tokyo」の運営を受託していたり、蔦屋書店が「Startup Hub Tokyo TAMA」を受託していたりする。彼らが参入するのは、もちろん利益の追求もあるが、スタートアップとの接点を持ちたい思惑もある。こうした異業種の参入は、地方にも波及しているようである。
そして3つめが、郊外や地方に多く見られるケースで、地元のコミュニティーを作りたいと考えた地場企業の参入だ。
実は、コワーキングスペースの開設には国や自治体から交付金や補助金が下りる。その金額は数千万円規模に至る場合もあり、リモートワークの需要があまりない地方都市でも、開設自体はしやすいのだ。中には、運営費の補助がある自治体もある。中小事業者でもコワーキングスペースを作りやすい環境があるため、雨後の筍(たけのこ)のように新規参入があるというわけだ。
なお、IT事業者でみると、国内ではまだ有力なものはない。米「officeRnD」や英「NEXUDUS」などコミュニティー運営のためのプラットフォームや、無料コワーキングオフィス紹介サイト「Seats2meet.com」などが海外ではビジネスとして拡大中だ。日本ではまだこの分野にもビジネスチャンスがありそうだ。
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