長谷川: 退店についてはどういう指標を持っていますか?
単純にPLだけを見て「この店は赤字だから閉めないとまずい」という人もいれば、「ここはフラグシップや、この場所に店があることに意味があるんや」という人もいますよね。
藤原: そもそもイケてれば、支持されていれば、赤字にならないと思うんですよね。
ユナイテッドアローズは青山に「H BEAUTY&YOUTH」というかっこいい店があります。高い賃料を払ってアウトドアグッズを売っているんです。アウトドアグッズなんて郊外に行けばいくらでも買えるでしょう。でも、自分たちのこだわりが詰まったブランドでアウトドアグッズを作ったら、オープン初日にお客さまが300人並んでくださった。
それがブランドであり、接客、マーケティング、マーチャンダイジングの腕じゃないですか。一店舗の売り上げだけを切り取って判断するのは短絡的な気がしますね。
緒方: 中川政七商店も渋谷の駅ビルに出店しました。賃料が高いので、利益率はあまり良くありません。でも、新規会員獲得比率は抜群に高く、ECを含めてLTV(顧客から生涯に渡って得られる利益のこと)をならすと実は貢献度が非常に高い。
売り上げ以外の貢献をデータ化することで、この場所に店があることの価値が誰にでも分かる形で見えてくることもある。要は、「店舗には売り上げ以外の役割もある」という認識を、社内でいかに浸透できるかだと思います。
長谷川: お客さんに提供しようとしている価値観と実際がズレている会社も結構ある。お客さんにはすてきなライフスタイルを提供しようとしているのに、社員はしばいて働かしたるぞ、みたいなね。
緒方: これからの時代、長く生き残れるのは、働く人がその企業の哲学に身を投じ、うそ偽りなく真摯に働ける企業だと思います。そして、その哲学に共鳴してくださるお客さまと共に生きていく。
藤原: 組織が一丸となって結果を出すために、哲学は非常に重要です。歴史のある企業には大抵、哲学がありますよね。儲かっていないところはそれをビジネスに転化するのが下手なのだと思います。
緒方: 哲学を日常業務に自然と接続できる構造を作るのが重要です。
中川政七商店は、お店のスタッフに「あなたの仕事はなんですか」と聞けば、「日本の工芸を元気にするためにお客さまの心に接して好感を得ることです」と答えると思います。AかBかで判断に迷ったら、「Aの方が日本の工芸を元気にする」「それならAだ」となる。
自分たちが誇りに思える高い価値観を共有できていると、変な上司部下の関係がなくなったり、一枚岩になれたり、自然とサービスレベルも上がっていくんです。
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