クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ハイブリッドやEVのバッテリーはいつまでもつ? 寿命を決める温度管理高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)

» 2021年07月05日 07時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

 三菱のプラグインハイブリッド車とマツダの「MX-30」のEVモデルは、冷媒によって冷却するというユニークな方法を採用している。これは各バッテリーモジュールに這(は)わせたアルミ合金製のヒートシンクを、エアコンのクーラーガスの気化熱によって冷やすもので、充電中にも作動させることにより効果的に冷却できる。バッテリーモジュールのケースを介しての冷却なので、各セルの冷却ムラなどが気になるが、空冷と比べれば格段に冷却性能に優れ、水冷のリスクやデメリットもない合理的なシステムといえるだろう。

 マツダがバッテリーの保証を8年16万キロメートルと、従来のEVと比べれば驚異的な長期保証を実現しているのも、品質に対する自信の現れだ。残価設定ローンでの3年後の残価を55%とガソリン車と同等としているのも、ユーザーに安心して購入してもらうための方策なのである。

【訂正:11:10 初出時、テスラのバッテリー保証について情報に誤りがありました。テスラジャパンのバッテリー保証は8年または16万〜24万キロメートル(モデルにより異なる)で、70%のバッテリー容量を保証というものです。該当部分は削除しております。お詫びして訂正致します。】

マツダMX-30 EVモデルのバッテリー冷却システム。コンプレッサーで圧縮、コンデンサーで冷却した冷媒をバッテリーユニット内に導き、気化熱を利用してヒートシンクを冷やすことですべてのバッテリーモジュールを冷却する仕組みだ

バッテリーの容量が減っているEVはどうなるのか

 では、バッテリーの蓄電容量が減ってしまったEVには価値がない、ということになるのだろうか。中古車価格で30万円台から探せる初代リーフだが、チョイ乗り専用車兼非常用電源としての使い道しかないのかといえば、そうとは限らない。

 バッテリー交換が必須なEVにおいても、現在はバッテリーユニットの再生(リビルト)も一部では進んでいる。これは単なる中古バッテリーユニットではなく、中古バッテリーの各セルを診断し、使えなくなっているセルやモジュールを交換して再生したものだ。新品ほどの耐久性はないが、その分お値打ち(30万円〜工賃別)で、もうしばらく乗り続けたいというユーザーにはうってつけのソリューションだろう。

 リーフが登場した時から、バッテリーのリユースについては考えられていた。しかし5、6年前まではリーフの廃車による回収が進まず、リユース目的に設立された企業、フォーアールエナジーは家庭用蓄電池としての供給も新品バッテリーで対応するしかなかった。最近になってやっと、ディーラーでも再生バッテリーを扱える体制が整ってきた。

 最終的にはリチウムイオンバッテリーはリサイクルされてまた原料に戻ることもあって、すべてのリーフの使用済みバッテリーがフォーアールエナジーに集まってくるわけではないため、ニーズに応え切れていない印象もある。そのあたりのエコシステムが整えば、さらに効率良く再生バッテリーを提供できて、EVの長寿命化を果たすこともできるハズだ。

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