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ハイブリッドやEVのバッテリーはいつまでもつ? 寿命を決める温度管理高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)

» 2021年07月05日 07時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

バッテリーの寿命を決める温度管理

 ニッケル水素、リチウムイオンといった、充電して繰り返し使える蓄電池には、サイクル充電回数という寿命の目安がある。これは電池の特性の一つとも言えるもので、少ないもので500回、多いものでは3000回を超える高耐久を誇るバッテリーも存在する。

 サイクル充電というのは、完全に放電して満充電することを1サイクルとするもの。サイクル寿命は、リチウムイオンバッテリーの場合、500サイクル時のバッテリーの蓄電容量がISOやJISなどの工業規格で定められているが、前述の通り、500回を超えても十分な容量を維持しているものも多く、実際にはサイクル充電回数を超えても使えるバッテリーは珍しくない。

 それに、表示されているバッテリーの蓄電量と実際の能力はまったく同じではない。特にリチウムイオンバッテリーは過充電、過放電が寿命を縮め、突然死を招くことから、上限と下限に余裕を持たせている。つまりバッテリーの蓄電残量が表示されていても、それはマージンを差し引いたもので、バッテリー自体の容量を示しているものではないのである。

 サイクル寿命はバッテリーの特性によっても異なるが、実際の車両では温度管理などのマネジメントによるところが非常に大きい。

 バッテリーの冷却方式には自然空冷と強制空冷、そして水冷があるが、最も優れているのは水冷方式だ。水冷方式は文字通りバッテリーのモジュールに冷却水のパイプを通すもので、水漏れというリスクとコスト高、重量増というデメリットはあるが、バッテリーにとっては最も優しい環境を作ることができる。

 件の初代リーフのバッテリーは自然空冷方式で急速充電を繰り返したため、温度上昇により負極に金属リチウムが析出されていくことで蓄電容量が減少してしまったと考えられる。

 また三菱「iMiEV」は、充電特性やサイクル充電特性に優れた東芝のSCiB(チタン酸リチウムバッテリー)を採用していたにもかかわらず、それほど高い耐久性を獲得できなかったのは、やはりマネジメント面に問題があったのだろう。

 日本でバッテリーを水冷しているメーカーはホンダだけで、「クラリティPHEV」や「ホンダe」は水冷だ。水冷のメリットは冷却だけではないところにあり、氷点下となる状態ではバッテリーを暖めてバッテリーの活性を上げることもできる。

 日産も「アリア」では水冷方式を採用したようだから、急速充電や真夏の高速走行でのバッテリーの温度管理が可能になり、バッテリーの寿命も延びるのではないだろうか。

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