売上が9年で20倍に! 本物そっくりのカプセルトイが売れている背景に、2つのキーワード週末に「へえ」な話(2/4 ページ)

» 2021年07月17日 08時10分 公開
[土肥義則ITmedia]

飛行機の遅延と売り上げ増の関係

 同社は2012年に、カプセルトイ事業に参入した。初年度の売り上げは5000万円ほどで、その後も順調に伸びていき、20年度は10億円ほどに。10年足らずで事業規模を「20倍」ほどに拡大させたわけだが、その要因はどこにあるのか。取材したところ、「立地」と「精密さ」という2つのキーワードが浮かんできたのだ。

コメダ珈琲のコーヒーカップやシロノワールも

 最初に自販機を設置したのは、北海道の新千歳空港内である。フィギュア製作を行う海洋堂(大阪府門真市)と共同で、商品を開発した。看板アイテムは、バーチャルシンガーの「初音ミク」。同社でカプセルトイ事業を担当する青山雄二さんに、販売状況などを聞いたところ「ビギナーズラックでした。10万個売れれば“合格”としていましたが、35万個も売れまして」と当時を振り返る。

 好調な出足である。二匹目のドジョウを狙うかのように、次は羽田空港内で勝負する。このビジネスで欠かせないことの一つに「人流」が挙げられる。魅力的な商品を開発しても、自販機の前で人がいなければ売れることはない。基本的に人が多ければ多いほど好立地になるので、「新千歳よりも羽田」の公式が成り立つわけである。

 東京ドリームを夢見たものの、残念ながらつまづいてしまったのだ。「自販機の設置台数(20台ほど)が少なく、アイテムも魅力的なモノをつくることができなかったのかもしれません。在庫をたくさん抱えることになりまして、それはいまも残っている状態ですね」(青山さん)

オンキヨーの名機も開発

 ビジネスの世界は甘くない――。ビジネスパーソンであれば、誰もが一度は感じることであるが、ケンエレファントも羽田の地上で減速してしまう。エッジの効いたフィギュアをつくらなければいけないし、設置場所も吟味しなければいけない。この2つの反省を生かして、次の戦いの場として選んだのは、沖縄県の那覇空港である。

 石垣島出身のバンド「BEGIN」、元世界チャンピオンのボクサー「具志堅用高」などのフィギュアを販売したところ、25万個ほど売れた。合格点である。確かに、エッジの効いたキャラではあるが、なぜこれほど売れたのか。

 「出発ロビーの近くに自販機を設置しました。旅行が終わって、家へ帰る前に、おみやげとして購入される人が多かったのではないでしょうか。あと、台風などの影響で、飛行機の出発が遅れることがありますよね。そうしたときに『ちょっとレバーを回してみようか』といった人が増えるようでして。飛行機の遅延と売り上げ増の相関関係がうかがえました」(青山さん)

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