――新しい需要を取りこぼさず、自分たちの手でその需要を大きくし、市場を引っ張っていくことで盤石な経営を築き上げることができたんですね。最高益達成を支えた取り組みの2つ目は何だったのでしょうか?
政府が19年12月に打ち出した「GIGAスクール構想」の需要を取り込めたことです。GIGAスクール構想とは、教育現場のICT化促進のために全ての小・中学生にタブレットやパソコン(PC)などの学習用IT端末を配備し、校内ネットワーク環境を整備する取り組みのことです。当時、23年度末までに端末を整えるスケジュールだったのですが、コロナ禍で一斉休校になり、前倒しで取り組まれることになりました。
オカムラでは、学習用IT端末の充電と保管ができる「タブレット・PC充電保管庫」を20年6月に販売しました。これまでに教育施設向けの什器(じゅうき)開発・販売実績もあります。政府が発表した仕様を把握し、営業が学校や教育委員会にヒアリングし、ニーズを把握。商品を量産化、期限までに納入しました。
――競合も多かったかと思いますが、その需要をなぜ取り込むことができたのですか?
一番重要なことはスピード感だと考えています。今回は営業の動きを軸に部署間の連携を強め、一丸となって推進したことで成功を勝ち取ることができました。
役員や部長クラスの中間管理職が先頭に立ち、スピーディーに対応したことが大きかったと考えています。
――サプライチェーンの見直しも最高益達成の要因だと思いますが、それは中村社長自身が旗振り役となって取り組まれたのですね。具体的にどんな点を改善したのでしょうか?
「在庫回転率向上プロジェクト」を始動させました。まず、テレキューブやドレープなどの売れ筋商品の受注生産体制を強化し、回転率を高めました。並行して、既存商品の生産を抑制、在庫数を落とすことで、最低限の在庫で回転させ売り上げを立てます。また、工場からの直接納品を増やすことによって配送効率の向上を狙いました。
現場は「モノは腐らない」と言いますが、私は「腐る」と考えています。物理的に腐るという意味ではなく、在庫として持っていると価値が落ちていくという意味です。在庫は負債であり、商品として売れて初めて現金として入ってくるのです。
実際に、サプライチェーンの改革により16億円の物流コスト削減を実現しました。
――サプライチェーンの見直しは仕入れ、生産、物流などさまざまな部門を巻き込むためかなり大掛かりなものだったかと思います。なぜコロナ禍のタイミングで取り組んだのでしょうか?
先ほど社会に大きな変動が起こったときこそ新しい需要が生まれると言いました。私は同時にこういうときは、企業の体質を変える契機にもなり得ると考えています。
通常は10人で回している仕事を7人でやるように言っても「できるわけがない」という思いが先行します。一方、売り上げが落ち込んでいる状況下であれば、効率を上げてコストを下げるためにも「今まで10人でやっていた仕事を7人、いや5人でやるにはどうすればいいか」という思考が生まれるわけです。
サプライチェーンの見直しによって今期の決算は救われました。しかし、この取り組みが一過性のものであってはいけません。今後2年かけて作り方、運び方、売り方の構造全てを変えていこうと思っています。時代に合わせた社内システムを採用しない限り、ズレがどこかで生じます。常に最新の状態にアップデートすることが次の発展を連れてくると信じています。
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