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「偶発性を生むオフィスは存在しないが、偶発性を生み出すことはできる」 オカムラ中村雅行社長が明言する理由とは?アフターコロナのオフィス論(1/2 ページ)

» 2021年07月27日 11時20分 公開
[熊谷紗希ITmedia]

 新型コロナウイルスによって逆風にさらされていたオフィス関連市場。オフィス家具の買い替え需要は消滅し、オフィス縮小の動きが広がる中、いち早く顧客のオフィス改革ニーズをつかみ、需要と市場を育てたことで2021年3月期の通期連結決算で営業利益、純利益ともに過去最高を達成したオカムラ。

 記事の前編では、1度は赤字を覚悟したオカムラの起死回生の取り組みを探った。後編では、アフターコロナのオフィス論を同社の中村社長に聞いていく。

 アフターコロナのオフィス論として「オフィスは、他部署の社員との偶発的な出会いや雑談、ディスカッションが生まれやすいオープンな空間であるべき」といわれている。しかし、中村社長は「ただオフィスを変えただけでは、偶発的な出会いは生まれない」と言い切る。

 その理由とは? 従来のオフィスをアップデートするにはどういう仕組みが必要なのだろうか?

中村 雅行(なかむら・まさゆき) 株式会社オカムラ代表取締役社長執行役員。1951年東京都生まれ。73年早稲田大学理工学部卒業後、岡村製作所(現オカムラ)入社。設計施工管理部長、経営企画部長、オフィス家具部長などを歴任。96年取締役 経営企画部長、2001年常務取締役 企画本部長、06年常務取締役 生産本部長兼第一事業部長、07年専務取締役 生産本部長を経て、12年6月代表取締役社長、19年6月より現職。

オフィス改革ブーム、あと5年は続く

――オカムラはコロナ禍でのオフィス改革需要の波に乗り、21年3月の通期連結決算で最高益を達成したわけですが、このオフィス改革ブームはいつまで続くと見ていますか?

 日本企業の多くがオフィス改革に動き出せば、5年ほどは需要がなくならないと考えています。

 「5年経(た)ち、オフィス改革がある程度落ち着いてきたらどうするのだ」と思われるかもしれませんが、5年経てばきっとまた新しい需要が生まれてきます。その需要を逃さないようにしっかりと市場の動向を見て、すぐに動き出せるよう準備をしておくことが大切です。

――オフィス改革によって、従来のオフィスからどんなオフィスに生まれ変わるのでしょうか?

 新型コロナが収束したとしても出社率が100%に回復することはないと考えています。サテライトオフィスや駅の集中ブース、カフェ、会社の支店、在宅で働くことが当たり前になるでしょう。社員1人当たりのオフィス面積は00年から20年の間で縮小傾向にあります。00年は20平米ほどでしたが、20年には13平米ほどにまで減りました。分散出社や働く場所の自由化に伴い、社員1人当たりのオフィス面積は今後も小さくなっていくと考えられます。

 オカムラのワークデザイン研究所がオフィスや働き方に関する調査を実施しています。彼らはかつて在宅勤務を推奨していました。しかし、在宅勤務では本調子が出ないこともあるため、創造性の高い仕事をする場合にはオフィスに出社したほうがいいという結論になりました。簡単な作業は在宅で、新規事業の立ち上げやディスカッションが必要な仕事は出社するなど自宅とオフィスを使い分ける働き方になるでしょう。

 オカムラが考える最新のオフィス事例として、渋谷スクランブルスクエアに「CO-EN(交縁)ラボ」があります。20年6月に開設し、会議室の代わりに棚で仕切られた半個室を設けているほか、駅などに設置されている電話ボックスのような個室スペース「テレキューブbyオカムラ」(以下、テレキューブ)を用意しました。偶発的な出会いを生むラウンジやWeb会議用の個室、自由に利用できるカフェスペースなど社員の創造力を活性化させる場づくりを意識しています。

「CO-ENラボ」内装(画像:オカムラより)
CO-ENラボ内にも設置されているテレキューブ(左)とドレープ(画像:オカムラより)
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