JR3社、コロナ苦境続く 新幹線で鮮魚配送、ずらし旅、駅ナカ刷新……三社三様の打開策21年4〜6月期

» 2021年07月30日 19時06分 公開
[ITmedia]

 JR東日本、西日本、東海の2021年4〜6月期の連結決算が、7月30日に出そろった。新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた前年同期と比べると反動で増収、営業損失・純損失の赤字幅も縮小した。ただ、JR西と東海は通期業績予想を下方修正するなど、依然としてコロナ禍が影を落とす。鉄道の収入が伸び悩む中、三者三様の策を講じる。

photo JR東海は、22年3月期通期業績予想を下方修正(撮影:河嶌太郎)

 JR東は、売上高が前年同期比30.2%増の4333億円、営業損益が552億円の赤字(前期は1783億円の赤字)、純損益が769億円の赤字(同1553億円の赤字)。コロナ前の水準には回復せず、第1四半期としては過去2番目に低い営業収益を記録。2期連続で営業損失、純損失を計上した。22年3月通期の業績予想は、純利益が360億円のまま据え置く。

 鉄道事業を取り巻く環境が激しさを増す一方、JR東は「ライフスタイルの多様化は、大きなチャンスと捉え、成長・イノベーション戦略を再構築する」という。直近では、北海道・東北、北陸新幹線を活用し、首都圏の小売店に鮮魚を届ける──など、新サービスを始め、収益力の向上を目指している。

 JR西は、売上高が9.4%増の2019億円、営業損益が493億円の赤字(同942億円の赤字)、純損益が320億円の赤字(同767億円の赤字)。コロナの長期化に伴い、「運輸収入の大幅な減収を見込まざるを得ない」とし、通期の連結業績予想を下方修正。純損益は前回予想の30億円の黒字から一転、1165億〜815億円の赤字を見込む。

 鉄道事業では、運輸収入がコロナ以前の9割にとどまっても、安定的な利益を確保するためコスト削減を進める。ショッピングセンター「夙川グリーンプレイス」(兵庫県西宮市)の整備や駅ナカ商業施設「エキマルシェ大阪」(大阪市)のリニューアルなどで関西圏のブランド向上、さらには鉄道事業用の光ファイバーネットワークを活用した情報通信事業への挑戦など、策を用意する。

photo ショッピングセンター「夙川グリーンプレイス」(兵庫県西宮市)を9月に開業=JR西のニュースリリースより

 JR東海は、売上高が40.3%増の1806億円、営業損益が253億円の赤字(同836億円の赤字)、純損益が284億円の赤字(同726億円の赤字)。JR西と同様、通期の業績予想を下方修正し、純利益は前回予想の900億円から150億円に縮小する見通し。

 鉄道事業では、人気のある定番の旅から時間、場所、移動手段などをずらし、新しい旅行を提案する「ずらし旅」を企画。東海道新幹線と沿線のホテルを組み合わせた、ワーケーションプランも拡販している。

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