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創業以来初の「うなぎパイ」生産休止にもめげず、春華堂がコロナでつかんだ“良縁”地域経済の底力(2/5 ページ)

» 2021年08月05日 10時12分 公開
[伏見学ITmedia]

コロナ禍で進んだ社内改革

 いまだコロナは落ち着く気配がない。「当初は1年で終わると思っていましたが……」と山崎社長は悔しさを滲ませるが、けがの功名もあった。

春華堂の山崎貴裕社長(写真:筆者撮影)

 1つ目は「働き方改革」だ。今まで直営店は年中無休で営業していた。しかし、工場は減産し、県外の客もそう来なくなった。そこで20年5月14日から営業時間を短縮するとともに、週に2日、定休日を設けた。

 例えば、うなぎパイファクトリーは、コロナ前は年間70万人が訪れていて、平日も土日・祝日も多忙を極めていた。コロナを契機に、制度として社員のワークライフバランスを促すこととなったのである。

 2つ目は「生産の効率化」だ。これまでは工場であらゆる商品を一括生産していたが、一部を店舗で仕上げするように変えた。

 「工場で一括にすると全部動かさないといけないので、人件費も光熱費もかかります。そこで大きな在庫を持つ必要があるものは工場で作って、生菓子など当日仕上げられるものは、店舗でまかなうようにしました。店も1つの工場に見立てて、製造兼販売の機能を持たせたのです」

 また、生産量が減ると、原料のロスが問題になる。春華堂もこれに直面した。本来うなぎパイで使うバターが数十万トンも余って、工場の冷蔵庫に金塊のように積まれていた。無駄にしないためにはどうすればいいかを考え、新たに生まれた商品が「バター3℃」というフローズンバターサンドである。店舗では個数限定販売ということもあり、すぐに売り切れることもあるそうだ。

 3つ目が「社員のモチベーションアップ」である。例年、国内最大の洋菓子コンクール「ジャパン・ケーキショー東京」や、「静岡県洋菓子作品展」に職人が出場していたが、20年はコロナで大会が中止となった。このコンクールを目標にしていた職人は多かったため、急きょ、社内でコンテストを開いた。

社内コンテストの様子(写真:春華堂提供)

 ハロウィーンをテーマに、和菓子、洋菓子の職人が25人参加。従来ならば各自がコンクールの作品づくりに黙々と取り組むところ、今回は参加者同士がアドバイスを送り合うなど、お互いに技術力を向上しようとする姿勢が見受けられた。これが特に若手職人の刺激となり、次の社外コンクールに向けてモチベーションが高まったという。

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