クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

レアメタル戦争の背景 EVの行く手に待ち受ける試練(中編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/6 ページ)

» 2021年08月09日 10時50分 公開
[池田直渡ITmedia]

 7月12日掲載の記事「EVの行く手に待ち受ける試練(前編)」では、オールEV化に向かうに当たっての問題はキリなくあるが、特に厳しいのはバッテリーの供給が相当に多難であり、さらにそのもう一段先には原材料となるレアメタル開発の問題があるという話を書いた。

 まずはバッテリー生産量の話だ。2020年のバッテリー生産実績が全世界で200GWh。現在発表されたバッテリー工場建設計画の内、明確な数字を含むものだけの合算で800GWhある。未発表のものもあるだろうから、それを加算して最少で1000GWh、最大で1500GWhと予想し、可能な限りEVにとって有利な数字を採用して1500GWhをベース電動車何台分に相当するかを計算すると以下のようになる。

  • 1台当たり100kWhの超大容量EV——1500万台分
  • 1台当たり60kWhの大容量EV——2500万台分
  • 1台当たり40kWhの通常容量EV——3750万台
  • 1台当たり30kWhの小容量EV——5000万台
  • 1台当たり15kWhのPHV——1億台

 念のために断っておくが、これは2020年実績200GWhのバッテリー生産が、今後15年間で奇跡の躍進を遂げ、2020年比750%へと成長した場合の台数である。

テスラのEV、モデルY。50kWh以上のバッテリーを搭載していると見られる

 すでに何度も書いている通り、EVの普及には何ら反対するものではないし、むしろ普及を願う立場だが、10年や15年で、世界で年間に販売される新車1億台の全てをEVだけにするのはどう考えても無理という話である。これだけEV贔屓(ひいき)に計算しても全然足りない。そもそもバッテリー不足のご時世に、超大容量なんて贅沢(ぜいたく)のし過ぎだし、クルマだけでも足りないのに、据え置き型の蓄電池なんかに回していたら、さらにどうにもならなくなる。

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