クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

EV生産比率を5倍に増やすマツダと政府の“パワハラ”池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)

» 2021年06月28日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 6月17日、マツダは2030年に向けた技術開発の長期ビジョンを発表した。17年からマツダはこうした中期計画の説明を行っており、その大筋において、内容は変わっていない。

 しかしながら今回注目を集めたのは、30年時点のEVの生産比率を25%と大幅に上方修正した点だ。18年10月に開かれた記者会見では、マツダは「EV生産比率を5%」と見込んでいたわけで、今回の発表は数値だけを見れば5倍に増えている。

【訂正:15:40 初出で、筆者記憶違いのため、当初発表のEV生産比率を10%としていましたが、正しくは5%です。お詫びし訂正いたします。】

 だが本当にそうだろうか? 以下は筆者の受け取り方だが、マツダ自身本当にEVの販売台数が大幅に上向くとは考えていないように思う。

 という話に入る前に、ちょっと面倒だが断っておく。各社の発表はEV/FCVとなっているが、現実的な話として、少なくとも乗用車に関しては、30年時点で、FCVがカウント可能なほど大きな数字になるとは考え難く、実質的にはこれらに挙げられている数字はほとんどがEVを意味していると考えていい。FCVは重要な技術だと思うが、その普及期はもっと先だと思う。

 確かに昨今のタピオカ並みのEV流行具合を見ると、参入するメーカーと車種の増加によって多少の上方修正はあるかもしれないが、30年の段階で年間約1億台の世界全体新車販売の25%、つまり2500万台のEVが本当に売れるかといわれれば懐疑的にならざるを得ない。

 そもそも全世界でみれば、電気のない生活を強いられている人は20%といわれている。残り80%の内、EVを持つに相応しい家庭充電環境を手に入れられる人は精一杯多くカウントしても全ユーザーの半分程度で、つまりトータル40%。その半分以上がEVを買う状況までにはまだ時間が掛かるだろうし、そもそも毎年2500万台のEVを作れるだけのバッテリー生産環境と原材料調達環境が整っていない。兵站(へいたん)がないところで戦果が上がらないのは当然のことである。簡単にできるように言う人は「兵站なんかどうでもいい」という乱暴な理屈の人だ。

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