5月初旬に各社から発表された通期決算の結果を比較してみる本企画、前半ではトヨタ、日産、ホンダの3社を分析した。後編ではスズキ、マツダ、スバル、三菱を分析してみよう。
国内自動車メーカー7社の売上高(単位:億円)
スバルの決算は減収減益ではあったが、これまで散々述べてきた通り、人類史上希に見る災厄といえるコロナ禍での決算である。売上高は2020年3月期に対して5139億円減の2兆8302億円と15%以上のダウン。利益は20年3月期から1079億円ダウンの1025億円だ。
2020-2021のカーオブザイヤーも受賞した、スバルのレヴォーグ
筆者はよくぞここで押しとどめたと評価したい。コロナ禍の影響によるサプライチェーンの毀損(きそん)、特に半導体の不足は4月からの新年度にもマイナスの影響が予測されるが、それは世界中ほぼ同条件。スバルの場合、頼みの綱である北米マーケットでの新車販売が好調であることから、他社比較ではおそらく損害は軽微であると思われる。
原材料不足と需要増が同時に起きた場合、メーカーでは当然利益率の高いクルマを優先して作ることになるだろうから、そこでの穴埋めも可能だろう。
やはりグローバルマーケットの中でも米国の打たれ強さはちょっと別格である。米欧中という世界の3大マーケットの中でどれか1つを選ばねばならないとすればやはり米国なのだ。という意味では、北米一本足と揶揄(やゆ)されようが、中国一本足とは安定感が違う。そこのところでスバルは恵まれていると思う。
22年には、トヨタとの協業モデルの投入が実現すると目されている。すでに名前が発表されたEVのソルテラのみならず、トヨタのハイブリッドシステムを搭載するストロングハイブリッドの登場も期待できる。年度ごとに厳しさを増す北米のZEV(ゼロエミッションビークル)規制や、各地域のCAFE準拠規制への対処を始めないと、炭素クレジットの支払いに追われることになる。
- 国内乗用車メーカー7社の決算(前編)
例年ゴールデンウィークが明けると、国内自動車メーカーの通期決算発表会が相次ぐ。業界全体に対しての今年の総評を述べれば、コロナ禍の逆境にもかかわらず、各社奮戦し、期首に懸念されていたような危機に陥ることなく、日本企業の底力を見せつける結果になったと思う。ただし、1社だけ惨憺(さんたん)たる結果のところがある。
- 減収減益の日産決算 21年度は440万台、黒字化目指す
日産自動車は5月11日、2020年度の決算を発表した。売上高は前年から2兆円減少し7兆8600億円、営業利益は1100億円減少し1507億円の赤字だった。
- 再度利益上方修正のトヨタ その背景と森氏への苦言
トヨタ自動車は第3四半期の決算を発表し、期首に5000億円だった年間利益見通しは、第2四半期に続いて2度目の上方修正を加えて、ついに2兆円に達した。
- トヨタの決意とその結果
残念ながらリーマンショックまでの10年間、トヨタは調子に乗っていた。毎年50万台水準で増産を続け、クルマの性能を無視してまで工数を削っていった。しかし結果、リーマンショックの時は15%の生産ダウンで、4600億円の赤字を計上した。そこからカイゼンを積み重ねたトヨタは、コロナ禍にあっても四半期で黒字を保てるほどの強靭(きょうじん)化を果たした。
- ホンダの決算から見る未来
ホンダの決算は、コロナ禍にあって、最終的な営業利益率のダウンが4.2%レベルで抑えられているので、酷いことにはなっていない。ただし、二輪事業の収益を保ちつつ、四輪事業の利益率を二輪並に引き上げていく必要がある。特に、武漢第3工場の稼働など、中国での生産設備の増強は続いており、中国マーケットへの傾倒をどうするかは課題だ。
- 象が踏んでも壊れないトヨタの決算
リーマンショックを上回り、人類史上最大の大恐慌になるのではと危惧されるこの大嵐の中で、自動車メーカー各社が果たしてどう戦ったのかが注目される――と思うだろうが、実はそうでもない。そして未曾有の危機の中で、トヨタの姿は極めて強靭に見える。豊田社長は「トヨタは大丈夫という気持ちが社内にあること」がトヨタの最大の課題だというが、トヨタはこの危機の最中で、まだ未来とビジョンを語り続けている。
- 強いトヨタと厳しい日産
日本の自動車メーカーは調子が良いのか悪いのか、とくにここ数年中国の景気悪化が伝えられており、その影響が心配される。全体を見て、とにかくこの逆境下で強さに圧倒されるのがトヨタで、ちょっと言葉を失う厳しさに直面しているのが日産だ。スズキとマツダは日産を見るとまだ救われるが、下を見て安心していていい状況とは思えない。概要としては各社そろって、程度の差はあれど逆境である。
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