クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

三菱の厳しすぎる現実 国内乗用車メーカー7社の決算(後編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)

» 2021年06月07日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

インドの先行きに一抹の不安が残るスズキ

 スズキの決算はトヨタに次ぐ大健闘であった。主力マーケットであるインドへの新型コロナの上陸が遅かったこともあるが、それでも第1四半期を黒字でターンしたのは素晴らしい。通期としては減収増益で、売り上げのダウン幅が小さいだけでなく当期純利益ではプラスで締めている。

コロナ禍直撃の第1四半期(20年4-6月)を黒字で終えることのできたスズキ(決算資料より)

 これだけの逆境で、営業利益ではマイナスながら、純利益を増益に持ち込んだ腕っ節は大したものである。ただし、インドのこれからが分からない。すでにピークアウトの兆候が見えているとはいうものの、ここ数カ月インドで猛威を振るった変異株の影響はまだ数字になって出てきていない。

 しかも、スズキは関係会社ともども、生産に使う工業用酸素を、医療用に供出するなどの活動も行っており、その間は工場も閉鎖になっていた。こうした影響がどの程度になって現れるかはまた予断を許さない。

 加えて、日本政府の変なかじ取りで、軽自動車までEV化を進めなくてはならないなど、開発に投入する原資が増えていく傾向にある。ということで、21年3月度決算で見事な戦いぶりを示したスズキが、更なる災禍の来襲をどこで押し返して見せるのかが問われる一年となるだろう。

マツダの利益率改革はいつ成るのか?

 広い意味でいえば、今回のコロナ禍に対して、日本の自動車メーカーは全体的には非常によく戦った。しかしここ数年繰り返し指摘している通り、マツダの決算で問題となるのは、利益率だ。

 マツダも善戦してはいるのだが、諸々タイミングが悪い。トヨタと共同で建設中の北米新工場への投資に加えて、ラージプラットフォームへの投資も響いている。しかもそのラージプラットフォームは、一度開発が進んでいたものを振り出しに戻して再開発することになっているから、追加コストが発生しているはずだ。

 複数の大型投資が集中したタイミングでコロナ禍を迎え、それでも限りなく赤字スレスレの黒字決算で終えたことは評価すべきなのだが、そうした状況は丁寧な説明でフォローが必要な部分だと思う。

 「ラージが出れば」、あるいは「北米工場が稼働すれば」という一念で頑張っているところだと容易に想像できるが、出たらどうなるのかが、まだ具体的な数字を示して発表できていない。近々、中期経営計画の追加説明があるようなので、そこでもう少し具体的な説明が行われることを願う。

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