クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

国内乗用車メーカー7社の決算(前編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)

» 2021年05月31日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 例年ゴールデンウィークが明けると、国内自動車メーカーの通期決算発表会が相次ぐ。業界全体に対しての今年の総評を述べれば、コロナ禍の逆境にもかかわらず、各社奮戦し、期首に懸念されていたような危機に陥ることなく、日本企業の底力を見せつける結果になったと思う。ただし、1社だけ惨憺(さんたん)たる結果のところがある。

 もちろん、通期決算へ向けて各四半期の結果は見てきているので、この通期決算結果が寝耳に水というわけではないが、それでも各社の第3四半期(3Q)、4Qの巻き返しは凄まじく、予想を上回る結果となっている。

全体の総評

 言うまでもないが、この2021年3月期決算の最大のポイントは、一次的にはコロナ禍の需要の落ち込みにどう対処したかであり、二次的にはそれによって引き起こされたサプライチェーンの寸断による原材料と中間部品の供給不足による生産の制約をどう軽減したかが主題となっている。

 筆者は期首には、場合によっては倒産する会社も出てくるのではないかと考えるほど、事態は深刻だったし、常識的に考えて、売上高も利益も激減は避けられず、1Qと2Qで空いた大穴を3Qと4Qでどこまで埋められるかの勝負になると踏んでいた。「通期でわずかでも黒字になれば、ファインプレー」。そういう見通しを持って臨んだわけだが、結果は見ての通り。さすがに通期売り上げを対前年プラスに持っていった社はなかったが、多くの社が、営業利益や税引前利益をプラスで締めるという大金星の結果となった。

国内自動車メーカー7社の売上高(単位:億円)
国内自動車メーカー7社の営業利益(単位:億円)

 利益がマイナスだったのは日産と三菱で、日産に関してはお家騒動に端を発する深刻な経営危機の最中に、まさに泣きっ面に蜂というタイミングでコロナ禍がやってきた。よくこれに耐えたし、いまだ数字には表れていないものの、絶対にやらねばならない難しい改革課題を耐えに耐えて前進させてきたという点について言えば、尊敬に値する部分も多々ある。この辺りは決算の数字だけ見ても分からない内容的な評価に依存する部分である。

 三菱に関しては、元々右肩下がりに厳しさを増していた中で、ついに最終防衛ラインの一角が崩壊した感じに見える。その結果、背に腹は代えられず、禁断の手を打ち始めた。決算の内容を見ているだけでツラい。そこに描き出されているのはまさに地獄である。

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