これを逆転させるには、全モデルの入れ替えと、そこから不退転の覚悟で値引きを抑制するしかない。急に値引きを止めれば売り上げは落ちる。しかしそれをやる以外に出口はないので、向こう数年の売り上げに目をつぶって、やせ我慢をしてでも、「新型車を高く売る」戦術を実行するしかない。
新車販売の値引き原資である販売奨励金は、昨対比で大きく減少。台数は見込めるが値引き幅の大きいレンタカー比率も大きく下がった
そういう局面で、コロナ禍がやってきた。誠にご愁傷様としか言い様がない。だから日産の施策には最大限の注視をしてきた。結果を言えば、日産はその難しいオペレーションをひとまず成功させている。まだ売り上げは付いてきてない。しかし、11車種もの新型を投入し、かつ「日産の説明によれば」値引きも抑制している。それが本当ならば、日産は再びリングに上がってくるための最初のステップをクリアしたと言える。
決算の数字こそ極めて厳しいが、逆説的に言えば、ここで決算の数字を飾るために、再び値引きのサイクルに入っていたらもう浮かぶ瀬はなかったと思う。このオペレーションのファーストステージをやり切った内田誠新社長の手腕に筆者は期待をかけている。
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日産自動車は5月11日、2020年度の決算を発表した。売上高は前年から2兆円減少し7兆8600億円、営業利益は1100億円減少し1507億円の赤字だった。
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残念ながらリーマンショックまでの10年間、トヨタは調子に乗っていた。毎年50万台水準で増産を続け、クルマの性能を無視してまで工数を削っていった。しかし結果、リーマンショックの時は15%の生産ダウンで、4600億円の赤字を計上した。そこからカイゼンを積み重ねたトヨタは、コロナ禍にあっても四半期で黒字を保てるほどの強靭(きょうじん)化を果たした。
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ホンダの決算は、コロナ禍にあって、最終的な営業利益率のダウンが4.2%レベルで抑えられているので、酷いことにはなっていない。ただし、二輪事業の収益を保ちつつ、四輪事業の利益率を二輪並に引き上げていく必要がある。特に、武漢第3工場の稼働など、中国での生産設備の増強は続いており、中国マーケットへの傾倒をどうするかは課題だ。
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リーマンショックを上回り、人類史上最大の大恐慌になるのではと危惧されるこの大嵐の中で、自動車メーカー各社が果たしてどう戦ったのかが注目される――と思うだろうが、実はそうでもない。そして未曾有の危機の中で、トヨタの姿は極めて強靭に見える。豊田社長は「トヨタは大丈夫という気持ちが社内にあること」がトヨタの最大の課題だというが、トヨタはこの危機の最中で、まだ未来とビジョンを語り続けている。
- 強いトヨタと厳しい日産
日本の自動車メーカーは調子が良いのか悪いのか、とくにここ数年中国の景気悪化が伝えられており、その影響が心配される。全体を見て、とにかくこの逆境下で強さに圧倒されるのがトヨタで、ちょっと言葉を失う厳しさに直面しているのが日産だ。スズキとマツダは日産を見るとまだ救われるが、下を見て安心していていい状況とは思えない。概要としては各社そろって、程度の差はあれど逆境である。
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