クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向
連載
» 2021年03月22日 07時00分 公開

バッテリーEV以外の選択肢池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/6 ページ)

バッテリーEV(BEV)やプラグインハイブリッド(PHV)などの「リチャージ系」は、自宅に充電設備がないともの凄く使いにくい。だから内燃機関はしぶとく残るし、ハイブリッド(HV)も然りだ。ただし、カーボンニュートラルにも目を配る必要はある。だから、それらを補う別のエネルギーを開発しようという機運はずっと前から盛り上がっている。

[池田直渡,ITmedia]

 「世界はすでにEV(バッテリーEV)にかじを切った」と自信を持って言い切る人々が多い昨今。ずいぶん乱暴な話だなと毎度思っている。

 すでに何度も書いている通り、これから先EVは増えていくし、EVが全く普及しない未来はないだろう。そこまではいい。しかしEVだけで世界のすべてのモビリティがまかなえる未来なんてわれわれが生きているうちはもちろん、その100年先にも来ない。

 世界を見渡せば電気のない暮らしをしている人はまだ14億人もいる。その事実をもってすれば、水と安全はタダ、電気はどこにでもあると考えるのは独善的だということが分かるだろう。

 この14億人に電気が行き届くためには何が必要かといえば、産業とインフラの発展で、それを阻害している原因は、戦争や紛争を中心とする治安と秩序の不安定である。よって世界に例外なくEVが普及するためには、まず人類は戦争を止めなくてはならない。人類はいつ戦争を止められるだろうか?

 ということで、豊かな先進国においてEVの普及を目指すことに異論はないが、そのために他の選択肢を否定する考え方には途上国の切り捨てという意味で大いに異論がある。アフリカの一部地域でEVが売れ始めているからといって、それは限られた地域での話である。世界にはさまざまな環境があり、それぞれの環境の中で多くの人々が暮らしていることを考えれば、多様性を持つことは極めて重要なのだ。

 貧しい途上国の物流を担うのは、先進国で使い古された頑丈な中古車だし、そういう旧式のガソリンやディーゼル系モビリティ抜きでは地域の生活がままならない。それが途上国だけの問題かといえば、例えば日本だって、私鉄駅から徒歩10分、築30年のファミリー向け3LDKのマンションの駐車場や、もっといえば月極の駐車場に充電設備が整うのは一体いつのことになるのやらという話である。EVの普及を目指すという穏やかで漸進的な話なら良いが、過激なEV唯一主義が内包しているのは、貧富の分断構造なのだ。

福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)の水素貯蔵タンク。太陽光から得た電力を元に、年間9トンのカーボンフリー水素を生産する
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