さて、昨日掲載の前編にあたる「ファクト編」では、政府発表では、そもそも官邸や省庁は一度も「ガソリン車禁止」とは言っていないことを検証した。
記事の執筆時点である12月28日の時点で、公的な裏付けのあるファクトは人物ベースで2つだけ。菅義偉首相は所信表明演説で(詳細は昨日の記事を参照)「2050年にはカーボンニュートラル」を宣言した。ただし、それに向けたロードマップはまだ抽象論でしかなく、特に最も大切な電源構成について「変わらなきゃ」としか言っていない。原子力なのか、再エネと水素のコンビなのか(再エネだけでやるならしわ取り用に水素は不可欠)もはっきりしていない。クルマについては一言も述べていない。
カーボンニュートラルに向けた取り組みの1つ、トヨタの新型MIRAI
ついで小泉進次郎環境大臣は会見の中で(詳細は昨日の記事を参照)「RE100とEV100を宣言」した。これは企業や団体が使用する全電力を100%CO2フリーにすること、同じく全車両を100%EV(EV/FCV/PHEV)にするという宣言で、すわ日本中の企業がそうなるのかと不安が広がったが、内実を見れば、RE100とEV100を宣言したのは環境省の内部調達の話であって、国のエネルギー需要に与えるインパクトはゼロに近いものであった。
つまり公的な発表が何もない。にもかかわらず、あたかも30年にガソリン車が禁止になるかのような話が、あれだけ世間をにぎわしたのはなぜか? それは経産省と環境省の一部が、意図的な観測気球を飛ばし、不勉強なメディアとEVを崇拝するEVファンが、世界の潮流だなんだと都合の良いように言説を振りまいたからだ。
「気候変動イニシアティブ(JCI)」と議論した小泉大臣(環境省提供)
ガソリン車禁止の真実(ファクト編)
年末の慌ただしい時期に、自動車業界を震撼(しんかん)させたのがこのガソリン車禁止のニュースだった。10月26日の菅義偉首相の所信表明演説と、12月11日の小泉進次郎環境大臣会見が基本になるだろう。カンタンにするために、所信表明演説を超訳する。
新燃費規程 WLTCがドライバビリティを左右する
ここ最近よく聞かれるのが、「最近の新型車ってどうしてアイドルストップ機構が付いてないの?」という質問だ。全部が全部装備しなくなったわけではないが、一時のように当たり前に装備している状況でなくなったのは確かだ。それに対してはこう答えている。「燃費の基準になる測定方法が変わったから」。
ようやくHVの再評価を決めた中国
中国での環境規制に見直しが入る。EV/FCVへの転換をやれる限り実行してみた結果として、見込みが甘かったことが分かった。そこでもう一度CO2を効率的に削減できる方法を見直した結果、当面のブリッジとしてHVを再評価する動きになった。今後10年はHVが主流の時代が続くだろう。
暴走が止まらないヨーロッパ
英政府は、ガソリン車、ディーゼル車の新車販売を、ハイブリッド(HV)とプラグインハイブリッド(PHEV)も含め、2035年に禁止すると発表した。欧州の主要国はすでに2040年前後を目処に、内燃機関の新車販売を禁止する方向を打ち出している。地球環境を本当に心配し、より素早くCO2削減を進めようとするならば、理想主義に引きずられて「いかなる場合もゼロエミッション」ではなく、HVなども含めて普及させる方が重要ではないか。
自動車メーカーを震撼させる環境規制の激変
「最近のクルマは燃費ばかり気にしてつまらなくなった」と嘆いても仕方ない。自動車メーカーが燃費を気にするのは、売れる売れないという目先のカネ勘定ではなくて、燃費基準に達しないと罰金で制裁されるからだ。昨今の環境規制状況と、それが転換点にあることを解説する。各メーカーはそのための戦略を練ってきたが、ここにきて4つの番狂わせがあった。
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