クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ガソリン車禁止の真実(考察編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/6 ページ)

» 2021年01月02日 05時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 さて、昨日掲載の前編にあたる「ファクト編」では、政府発表では、そもそも官邸や省庁は一度も「ガソリン車禁止」とは言っていないことを検証した。

 記事の執筆時点である12月28日の時点で、公的な裏付けのあるファクトは人物ベースで2つだけ。菅義偉首相は所信表明演説で(詳細は昨日の記事を参照)「2050年にはカーボンニュートラル」を宣言した。ただし、それに向けたロードマップはまだ抽象論でしかなく、特に最も大切な電源構成について「変わらなきゃ」としか言っていない。原子力なのか、再エネと水素のコンビなのか(再エネだけでやるならしわ取り用に水素は不可欠)もはっきりしていない。クルマについては一言も述べていない。

カーボンニュートラルに向けた取り組みの1つ、トヨタの新型MIRAI

 ついで小泉進次郎環境大臣は会見の中で(詳細は昨日の記事を参照)「RE100とEV100を宣言」した。これは企業や団体が使用する全電力を100%CO2フリーにすること、同じく全車両を100%EV(EV/FCV/PHEV)にするという宣言で、すわ日本中の企業がそうなるのかと不安が広がったが、内実を見れば、RE100とEV100を宣言したのは環境省の内部調達の話であって、国のエネルギー需要に与えるインパクトはゼロに近いものであった。

 つまり公的な発表が何もない。にもかかわらず、あたかも30年にガソリン車が禁止になるかのような話が、あれだけ世間をにぎわしたのはなぜか? それは経産省と環境省の一部が、意図的な観測気球を飛ばし、不勉強なメディアとEVを崇拝するEVファンが、世界の潮流だなんだと都合の良いように言説を振りまいたからだ。

「気候変動イニシアティブ(JCI)」と議論した小泉大臣(環境省提供)
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