カーボンニュートラルが目指すのは、あくまでもCO2の削減である。EV化はその手段に過ぎないにもかかわらず、今、手段が目的にすり替えられようとしている。ここは断固主張するが、成すべきはCO2の削減であって、EV化ではない。
確かに50年が近づいたとき、ゴールである完全なるカーボンニュートラルは、ガソリンエンジンやハイブリッドでは達成できない。だがしかし50年までのロードマップにおいて、例えば今、あるいは来年、EVが80万円台で手に入るわけではない。
400万円のEVが買えない貧乏人はクルマを禁ずるという社会主義的な乱暴な話にするならともかく、クルマの購入にかかわる個人の所得や、充電にかかわる住環境、航続距離が依存する地理的環境などさまざまな要因に対して、ソフトランディングを目指すのであれば、それらのハードルを全部クリアして、EVが自然に普及するまでの間、高効率な内燃機関やハイブリッドは、EVの欠点を補完する大事な技術である。むしろEVが発展するまでを支えるのがこれらの役割である。
日本には恐らく世界で最も多様な技術がある。それらを全部ゴミ箱に捨てて、不完全なままEVだけにしようという議論はあまりにも愚かである。古い橋を壊すのは新しい橋ができてからだ。そこで「古い橋があるから新しい橋ができないのだ」という理屈を振り回す人の意見に耳を貸す必要はないと思う。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。
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