すでに富士スピードウェイのショートコースで試乗を試しているトヨタの新型MIRAIを借り出して、2日間のテストドライブに出かけた。
カンタンに結論を書くと、インフラ、つまり水素充填(じゅうてん)の利便性は結構我慢がいる。1都3県の主要部にお住まいだとしても、計画的運用無しでは厳しい。例えば筆者のいつもの房総半島一周ルートでは、羽田、川崎を最後に、水素スタンドは1軒もなく、テストドライブを終えてアクアラインを戻って来る頃には、もうほとんどの営業時間が終わっている。常設施設でも概ね午後5時がラストだし、移動式だとおよそ午後3時。つまり、午後5時を過ぎたら、選択肢はイワタニの芝公園スタンドのみで、それも午後9時終了だ。
テストルートは1周300キロなのだが、実燃費的に2周だと余裕がなく心許ないから、1日目夜の充填を逃すと2日目のスタート時間が制限される。翌日の営業開始は早い所で午前9時。トヨタの場合、広報車の返却期限が午後4時なので、もうルート変更を余儀なくされてしまう。2日連続で300キロ級の移動をしようと思うと、それなりに制限される。
行き先を水素スタンドのあるエリアに絞るか、スタート、ゴール時間に制限をかけないと燃料補給ができない。一方で、計画性をしっかり持てばギリギリ使える。要はそうまでして乗りたい人は、頑張れば乗れる。しかし、「運用ごときでストレスを抱えたくない。クルマってのはハンドルを握った時の気分で行き先を決めるのだ」という人にはもう相当なストレスになると思う。
初代に比べてはるかにスタイリッシュになった新型MIRAI。街中でおじさんたちの熱い視線を浴びる。近年なかなかない体験だ
- やり直しの「MIRAI」(前編)
新型MIRAIでは、ユニット配置が全面的に改められた。デザインを見れば一目瞭然。初代から翻って、ワイド&ローなシェープを目指した。かっこ悪い高額商品は売れない。スタイリッシュであることは高額商品にとって重要な商品価値だ。新型MIRAIはプチ富裕層にターゲットを絞り込み、ひと昔前の言葉で言えば「威張りの利く」クルマへの生まれ変わろうとしている。
- やり直しの「MIRAI」(後編)
新型MIRAIは、魔法の絨毯のような極上の乗り心地と、重量級GTとして破格の運動性能を両立している。しかしインフラとの兼ね合いなしにFCVの普及はあり得ない。後編ではそのインフラの今と未来をエネルギー政策全般を通してチェックしてみたい。
- 燃料電池は終わったのか?
2014年末にトヨタが世に送り出したMIRAIだが、最近話題に上ることは少なくなった。「燃料電池は終わった」とか「トヨタは選択を間違った」としたり顔で言う人が増えつつある。実のところはどうなのだろうか。
- 水素に未来はあるのか?
「内燃機関が完全に滅んで、100%全てのクルマがEVになる」という世界は、未来永劫来ないだろう。そのエネルギーミックスの中にまさに水素もあるわけだが、FCVにはいろいろと欠点がある。しかし脱化石燃料を目標として、ポスト内燃機関を考え、その候補のひとつがFCVであるとするならば、化石燃料の使用を減らすために「化石燃料由来の水素」に代替することには意味がない。だから水素の製造方法は変わらなくてはならない。また、700気圧という取り扱いが危険な貯蔵方法も変化が必要だ。
- 日本のEVの未来を考える(前編)
EVの未来について、真面目に考える記事をそろそろ書くべきだと思う。今の浮ついた「内燃機関は終わりでEVしか生き残れない論」ではないし、「EVのことなんてまだまだ考える必要ない論」でもない。今何が足りないのか? そしてどうすれば日本でEVが普及できるのかという話だ。
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