クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

MIRAI 可能な限り素晴らしい池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/8 ページ)

» 2021年02月08日 06時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

MIRAIのパワートレイン

 一方で、クルマのデキはどうかといえば、これは相当に素晴らしい。もちろんいくつか指摘すべきポイントはあるけれども、総合的に相当な高得点。少なくとも年末の「今年乗った良いクルマ」に確実に入る。あとはこれで燃料が水素でさえなかったら(笑)ともいえる。

 まずは注目のパワートレインについて、この部分の長所はほぼEVと同じだ。テスラのモデル3試乗時(記事参照)に書いた通り、モーターは速度ゼロからの立ち上がりトルクが厚く、またシャシーにほぼ剛結されているので、マウントのゴムがパワーを食ってのトルクの位相遅れが出ない。特に加速から減速、減速から加速というゼロ点を挟んだ時にそのメリットは顕著で、モーターならではの良いパワートレインである。

 全く同じことがハンドリングにも良い影響を与えている。ステアリングの入力で横方向加速度が立ち上がった時に、重たいパワートレインが遅れて、その結果、ヨーの立ち上がり(鼻先の横への動き始め)に遅れて外側前輪に荷重が乗り、しかもそれがピークアウトしてもう一度ばねが伸びるという現象が起きない。対角線のロールが時間軸で美しく線形である。これもEVと同じだ。パワートレインのマウントによるメリットは、エンジン車には求められない美点をモーター駆動のクルマが持っているということであり、一つの事実である。

後軸にマウントされて後輪を駆動するモーター

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