一方で、クルマのデキはどうかといえば、これは相当に素晴らしい。もちろんいくつか指摘すべきポイントはあるけれども、総合的に相当な高得点。少なくとも年末の「今年乗った良いクルマ」に確実に入る。あとはこれで燃料が水素でさえなかったら(笑)ともいえる。
まずは注目のパワートレインについて、この部分の長所はほぼEVと同じだ。テスラのモデル3試乗時(記事参照)に書いた通り、モーターは速度ゼロからの立ち上がりトルクが厚く、またシャシーにほぼ剛結されているので、マウントのゴムがパワーを食ってのトルクの位相遅れが出ない。特に加速から減速、減速から加速というゼロ点を挟んだ時にそのメリットは顕著で、モーターならではの良いパワートレインである。
全く同じことがハンドリングにも良い影響を与えている。ステアリングの入力で横方向加速度が立ち上がった時に、重たいパワートレインが遅れて、その結果、ヨーの立ち上がり(鼻先の横への動き始め)に遅れて外側前輪に荷重が乗り、しかもそれがピークアウトしてもう一度ばねが伸びるという現象が起きない。対角線のロールが時間軸で美しく線形である。これもEVと同じだ。パワートレインのマウントによるメリットは、エンジン車には求められない美点をモーター駆動のクルマが持っているということであり、一つの事実である。
後軸にマウントされて後輪を駆動するモーター
やり直しの「MIRAI」(前編)
新型MIRAIでは、ユニット配置が全面的に改められた。デザインを見れば一目瞭然。初代から翻って、ワイド&ローなシェープを目指した。かっこ悪い高額商品は売れない。スタイリッシュであることは高額商品にとって重要な商品価値だ。新型MIRAIはプチ富裕層にターゲットを絞り込み、ひと昔前の言葉で言えば「威張りの利く」クルマへの生まれ変わろうとしている。
やり直しの「MIRAI」(後編)
新型MIRAIは、魔法の絨毯のような極上の乗り心地と、重量級GTとして破格の運動性能を両立している。しかしインフラとの兼ね合いなしにFCVの普及はあり得ない。後編ではそのインフラの今と未来をエネルギー政策全般を通してチェックしてみたい。
燃料電池は終わったのか?
2014年末にトヨタが世に送り出したMIRAIだが、最近話題に上ることは少なくなった。「燃料電池は終わった」とか「トヨタは選択を間違った」としたり顔で言う人が増えつつある。実のところはどうなのだろうか。
水素に未来はあるのか?
「内燃機関が完全に滅んで、100%全てのクルマがEVになる」という世界は、未来永劫来ないだろう。そのエネルギーミックスの中にまさに水素もあるわけだが、FCVにはいろいろと欠点がある。しかし脱化石燃料を目標として、ポスト内燃機関を考え、その候補のひとつがFCVであるとするならば、化石燃料の使用を減らすために「化石燃料由来の水素」に代替することには意味がない。だから水素の製造方法は変わらなくてはならない。また、700気圧という取り扱いが危険な貯蔵方法も変化が必要だ。
日本のEVの未来を考える(前編)
EVの未来について、真面目に考える記事をそろそろ書くべきだと思う。今の浮ついた「内燃機関は終わりでEVしか生き残れない論」ではないし、「EVのことなんてまだまだ考える必要ない論」でもない。今何が足りないのか? そしてどうすれば日本でEVが普及できるのかという話だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.