日本の漫画ビジネスを巡る状況が、2021年に大きく変わっている。一つは作品をデジタルで届ける流通・販売の変化、もう一つは世界で日本漫画が読まれるグローバル化だ。
書店数や雑誌販売部数の継続的な減少もあり、出版は斜陽産業と思われがちだ。しかし現在、大手出版社は空前の好景気を迎えている。直近の講談社の純利益は前期比1.5倍、小学館は44%増、集英社は2倍を超える。この好業績を牽引するのがデジタル出版、とりわけ漫画だ。
全国出版協会・出版科学研究所によれば、20年の出版市場は前年比4.8%増の1兆6168億円。2年連続で拡大した。中でも漫画の勢いがすごい。電子コミックの増加は同31.9%増である。またインプレス総合研究所は、20年度の電子出版に占めるコミックのシェアを83%としている。デジタルで読まれる書籍・雑誌のほとんどが漫画というわけだ。
13年度に731億円であった電子コミック市場は、20年度に4000億円を超えた。20年度は新型コロナ感染症による巣ごもり需要もあり、前年比で33%増となる。こうした追い風を受けて漫画部門の大きな出版社の業績が好調なのである。
国内の状況はメディアでもしばしば取り上げられるが、20年のもう一つの大きな潮流である、海外マーケットの変化は見落とされがちだ。いま日本漫画の海外翻訳出版が急拡大しているのだ。
国外最大の日本漫画市場である北米(米国・カナダ)の20年の売り上げは約2億4000万ドル(約260億円)。前年の約1億6000万ドル(約175億円)から急増した。
米国と並ぶ日本漫画の海外市場であるフランスで先ごろ、興味深いニュースがあった。政府が文化芸術サポートを目的に18歳以上の若者に300ユーロ(約4万円)のカルチャーパス」を配布したところ、かなりが日本の漫画に向かったという。
日本漫画の現地出版社KAZEでは「予想をはるかに超えるセールスを記録しました。『約束のネバーランド』や『マッシュル-MASHLE-』のような人気作品はもとより、『ハイキュー!!』『地獄楽』『ジャガーン』といった作品も売り上げが3〜4倍となっています」と話す。
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