日本の漫画は世界で人気と思われがちだが、実は00年代後半から10年代前半は、海外でかなり深刻な不況にあえいでいた。北米市場では07年に売り上げ2億1000万ドルとブームの頂点を迎えた後に、12年には6000万ドルまで転げ落ちた。北米だけでなく、欧州やアジアの主要市場でも同様で、各国で日本漫画の翻訳出版から撤退する会社が相次いだ。このままでは海外から日本漫画市場はなくなるのではといわれたほどだ。
急激な市場縮小の理由とされたのが、インターネット上の海賊版だ。最盛期には英語で人気漫画『NARUTO-ナルト-』を検索するとトップに海賊版サイトが現れ、日本漫画の海賊版サイトが、検索アクセス数の多いサイトのグローバルランキングにでるほどだった。
状況が反転したのは、17年。16年に北米で日本漫画の売上が急伸したと報告された。半信半疑であった業界も17年、18年、19年とさらに成長が続き、自信を深める。20年には、遂に13年ぶりに北米市場で過去最高の売り上げを更新した。
漫画市場の復活は、日本アニメの人気拡大と結びつけて説明されることが多い。映像配信プラットフォームでアニメを知ったファンがその原作である漫画に目を向けた。日本のポップカルチャーへの関心を深めたというわけだ。
ただ00年代後半に猛威を振るったネットの海賊版はなくなっていない。20年ごろから再び海外の違法サイトが増加していると報告されている。海賊版増加にもかかわらず漫画販売が拡大しているのは、海賊版の拡大自体が漫画ブームの大きさを示しているのかもしれない。漫画の人気とニーズの拡大が海賊版の需要を生み、増加させているのだ。
それでも以前に比べれば、漫画ファンの多くが「海賊版は悪だ」と考える認識は広がった。また出版社、権利保有者も法的処置をためらわず行使することが増えている。それらが抑止力になっている。しかし安心できるわけでない。無料で違法に作品を読むことが習慣化すれば、やがてそれは正規ビジネスを傷つけるからだ。
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