「MANGA Plus」は日本の切り札になるのか?   「少年ジャンプ+」編集部の挑戦ジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(4/5 ページ)

» 2021年09月02日 08時00分 公開
[数土直志ITmedia]

海外展開で欠けていたモノ

 海賊版形成で問題になってくるのが、正規に漫画をファンに届けるシステムである。問題は、たとえ海賊版が排除されても、正規配信がなければ意味はない。そもそもファンに作品が届かなくなる。現在、それが十分でない。

 海賊版の問題はアニメでも同様だが、漫画に比べるとアニメ業界での危機感は薄まっている。正規の映像配信プラットフォームを通じてマネタイズのシステムが組まれているからだ。ほとんどの新作アニメが日本で放送されると、ほぼ同時に各国で配信することで海賊版に対抗している。

 翻訳出版された漫画は電子出版でも読めるが、北米では一冊およそ1000円程度などと決して安くない。正規刊行される作品も限られており、雑誌連載中の作品の同時配信はハードルが高い。貪欲なファンのニーズに応えるアニメの世界同時配信とは異なる。

 講談社の『進撃の巨人』や、KADOKAWAの電子書籍配信サービス「BOOK☆WALKER」などの試みはあるが、日本の主要作品がそろうプラットフォームとはいかない。連載作品数が多いこともあり、翻訳作業の多さとスピードが課題だ。

 日本漫画の安くて早いプラットフォーム、雑誌連載と同時の海外展開はハードルが高いとされるなかで、この常識に挑み注目されているのが集英社の「MANGA Plus」である。

「MANGA Plus」の動向に注目が集まる

 19年に始まったMANGA Plusは、ジャンプグループの雑誌連載作品を最新号の発売や最新話更新のタイミングに合わせて全世界(日本・中国・韓国を除く)に配信する。配信作品数は英語版では40タイトル以上。タイトル数は異なるがスペイン語やポルトガル語のほかに、タイ語、インドネシア語、ロシア語まで多言語展開する。冒頭数話と最新話のみを無料提供する仕組み、マンスリーアクティブユーザー数は500万超とのユーザーの多さ、そして「少年ジャンプ+」編集部が運営する体制も特徴である。

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