リテール大革命

「おもしろい!」が95% コクヨの“実験店舗”はどんなところなのか「実証実験」の結果(2/4 ページ)

» 2021年09月19日 08時05分 公開
[土肥義則ITmedia]

商品の価値を伝えたい

 このほかにも、店内にはさまざまな工夫が施されているが、筆者は2つのことに興味をもった。1つは「書き心地を没入」できること。タブレット端末を床に向けると、書き心地が違う紙「ツルツル」「さらさら」「ザラザラ」が敷かれていて、その上を歩くと、書いている音が流れてくる。自分のつま先がまるでペン先のような感覚で、書き心地にハマることができるのだ。

書き心地が異なる紙「ツルツル」「さらさら」「ザラザラ」が敷かれていて、その上を歩くと、書いている音が流れてくる

 もう1つは、「オノマトペ(擬態語)」である。タブレットの画面に「サクッ」「サクサク」「ぷにぷに」といった文字が映し出され、文具を使ったときのオノマトペに埋め尽くされるゾーンがある。いや、待てよ。よーく見ると、「ゴゴゴゴゴ」とか「ジャーン」といった文字も出てくる。文具を使ってこのような音が出てくるのかな? と疑問を感じたので、担当者に聞いたところ「エンタメ要素を取り入れていまして、店舗で聴こえてきそうな音などを盛り込みました」とのこと。

タブレット端末に「オノマトペ」が表示される

 それにしても、なぜこのような実証実験をしたのか。企画担当者の三上由貴さん(ステーショナリー事業本部)に聞いたところ、「文具はどのようにして買われているのか。当社が調査したところ、店頭で商品を見て、その場で購入する人(68%)が最も多いことが分かってきました。そうした現状がある中で、商品の価値をどのようにすれば伝えることができるのかを模索してきました」という。

直近1年で文房具を自身で購入した12歳以上の男女1454人が回答(2021年4月コクヨ調べ) 

 では、どのようなことをやってきたのだろうか。新商品がでたら、POPをつくる。売り場の一角に、新商品のコーナーをつくる。小型のディスプレイを設置して、商品動画を流す。アナログの世界からなかなか脱することできない現状が続いていて、テクノロジーのチカラを使ってなにかできないかと考えても、電源の問題などでなかなかその壁を乗り越えることができなかったのだ。

 話はちょっと変わるが、コクヨの「カドケシ」をご存じだろうか。一般的な消しゴムのカドは8個だが、この商品はキューブが10個集まっているので、カドは28個もある。斬新的なデザインはニューヨーク近代美術館の「MoMAデザインコレクション」に選ばれるなど、さまざまな賞を受賞している。

カドケシにはカドが28個ある

 Webサイトを見ると、開発秘話なども紹介されている。にもかかわらず、店の棚を見ると、ただ置かれているだけ。「こうしたギャップを埋めるために、どうすればいいのか。商品にスポットライトを浴びせるためには、どうすればいいのか。アナログとデジタルを融合させた店舗にすれば、こうした課題を解決できるのではと考え、これまでにないコンテンツをつくることにしました」(三上さん)

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