製品ごとに価格を統一している理由について、山口氏は「無人店舗の弱み」と話す。
「有人店舗でお客とコミュニケーションが取れる場合は、製品の製造メーカーや容量、製造年数やスペックなどの情報を説明できるため、販売価格を調整しやすい。ですが、無人店舗はお客が自分で製品の価値を判断するしかない。そのため、販売価格は一律にしました。しっかり収益を上げられるように仕入れ価格を調整しています」(山口氏)
確かに家電量販店に行けば、店員がメーカーの特徴やスペックなど細かすぎるほどに説明してくれる。家電に詳しい人であれば説明がなくても製品を見ながらスペックなどを推測できるかもしれないが、そうでない人が大多数だろう。販売価格の統一は、お客への「配慮」の表れともいえるかもしれない。
非の打ちどころがないビジネスモデルのように見えた「無人店」にも意外な弱点があることが分かった。続いて「品ぞろえ問題」だ。電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機、テレビに加えてドライヤーとアンテナケーブルも売られていたが、少々ラインアップが寂しすぎやしないだろうか……?
家で過ごす時間も増えているわけだし、美容家電とかコロナ対策のサーキュレーターとか置いてもいいのでは?
山口氏は、「販売できる家電も無人店舗がゆえに制限される」と話す。売るのは生活するうえで必要最低限の家電だけ。無人店舗のため、最新の美容家電やユニークな製品を置いても、使い方を説明する店員がいないため売りにつながらないという考えだ。
基本的には冷蔵庫などの4製品をメインとし、大量に安く仕入れた製品や季節モノは例外として販売するという。ドライヤーは、東京オリンピック延期の影響で民泊ビジネスから撤退した企業から仕入れた。1台400円で100台仕入れ、660円で販売している。利益はわずかだが、興味本位で来店したお客が手ごろに購入できるような価格にした。製品廃棄を防ぐ目的もあるという。
少しずつ疑問が解消されてきたが、「買い替え頻度問題」も忘れてはいけない。内閣府が21年3月に実施した消費動向調査によると、冷蔵庫、洗濯機、テレビの買い替え頻度は2人以上の世帯で、いずれも10年を超えていた。使用頻度が落ちる単身世帯ではさらに買い替え頻度が下がると予想できる。「安いから」という理由だけで、家電を買い替える人は少数派だろう。
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