「今日の仕事は、楽しみですか」が炎上 なぜこの広告が世に出たのか“いま”が分かるビジネス塾(4/4 ページ)

» 2021年10月12日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]
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ブランディングの本当の意味

 今回の広告は、品川駅のコンコースに大量表示したものなので、マスを対象としているのは明らかである。社長が自身のツイッターで告知していることや、(当初の予想とは異なる形とはいえ)ツイッターをきっかけに拡散したことを考えれば、実際に品川駅にいる人ではなく、ネット利用者を対象としたものかもしれない。いずれにせよターゲットがマスであることは同じであり、マスを対象としたブランディングというのは容易なことではない。

 近年の日本経済は賃金の低下が著しく、非正規労働者の中には貧困に陥る人も多い。数が減ったとはいえ、依然としてブラック企業も存在している。こうした状況下において、しかもマス向けに、仕事に対する異様にポジティブなメッセージを流せば、多くの反発が出ることは予想できたはずである。

 マーケティングの理論上、そもそもマス向け広告でブランディングを行うこと自体が微妙だったことに加え、ネガティブな反応を発生させたという点で、今回の広告は上場企業のブランディングにとって逆効果だったと判断せざるを得ないだろう。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に「貧乏国ニッポン」(幻冬舎新書)、「億万長者への道は経済学に書いてある」(クロスメディア・パブリッシング)、「感じる経済学」(SBクリエイティブ)、「ポスト新産業革命」(CCCメディアハウス)などがある。


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