石油価格上昇 インフレによるスタグフレーションの心配はない?(1/2 ページ)

» 2021年10月13日 17時20分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 昨今、原油価格の高騰などから、景気後退とインフレ(物価上昇)が同時に起こるスタグフレーションを警戒する声が聞かれる。1970年代のオイルショックの際には、景気後退で給料が上がらないにもかかわらず物価が上昇し、生活者にとって極めて厳しい状況となった。

 しかし、日興アセットマネジメントのチーフ・ストラテジスト神山直樹氏は、「スタグフレーションといった、インフレが原因で経済が悪化するというのは、あっても3カ月間。石油ショックのときのようなスタグフレーションが起こることは、理論的にあり得ない」と話す。

日興アセットマネジメントのチーフ・ストラテジスト神山直樹氏

原油価格の急上昇

 スタグフレーション懸念がささやかれるのは、原油価格の上昇が一因だ。コロナショックでそれまでの1バレル60ドル台から急落し、2020年4月にはテクニカルな問題ながら、WTI原油先物が史上初のマイナス価格を付けるなど、原油動向は不安定だった。

 しかし、その後は価格を戻し、10月11日には80ドルを超えて上昇してきた。オイルショックのイメージもあり、また原油はさまざまな産業に必要なものでもあるため、原油価格が上昇すると、そのほかのさまざまな価格に上昇圧力がかかるのではないかという連想が働いた。

 「石油が上がったのは天然ガスが足りないこと、景気が回復して、いま石油石炭に依存する国も増えている。しかし、これが1年、2年続くことは考えにくい」(神山氏)

 現在の価格上昇は需要に対して供給が足りないからだが、あまりに価格が上がるとOPECも増産に入る。また高価格であれば、採油コストが高いシェールオイルも供給量が増える。「80ドルが高いといっても、このせいでインフレになる可能性は低い。2007年から08年は原油価格が100ドルだったが、この頃インフレになっただろうか? 原油の価格が上がると需要を減らす人がいて、すると消費量が減って影響が小さくなる。オイルショックの頃と違って、調整弁が出てきた」(神山氏)

 そもそも米FRBはインフレ率平均2%を長期目標としており、その前後でコントロールされるだろうというのが神山氏の見立てだ。そのため、インフレ懸念とはいわれても、長期金利は1.6%程度と比較的抑えられており、過度に上がる様子はない。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.