大手スーパーでは、イオン、ユニー、イトーヨーカ堂などが、フロアの一角を使った小規模な駅弁大会を開催。ローカルな食品スーパーでも、例えば関東ならば、オオゼキ、京急ストア、ベイシア、ヤオコー、マミーマートなどが同様に駅弁大会を行っている。駅弁大会には、旅行を自粛している人たちが旅の気分を手軽に味わえると詰めかけている。
1個1000円以上する商品も珍しくなく、スーパーで売るには高いはずだ。スーパーの弁当は、平均すれば1個400円くらいであり、駅弁の価格は2倍以上もする。それにもかかわらず駅弁の売れ行きは好調で、スーパーでは駅弁を売る催事が増えている。
ユニーの駅弁大会の歴史は古い。1976年から、毎年9月〜翌3月の土曜・日曜に、店舗ごとに決めたスケジュールで開催している。京王などの百貨店の催事で駅弁がよく売れていたことから、スーパーでもできないかと企画された。
ユニーは現在、「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフック・インターナショナルホールディングス傘下にある。中部と関東を中心に大型店「アピタ」、小型店「ピアゴ」の2ブランドで店舗展開しているが、変わらず駅弁大会を行っている。
同社広報によれば「特に、コロナ禍に入った昨年以降、駅弁大会の売り上げが増えている」とのことで、確かな手応えを感じている。筆者が訪問した、横浜市内の「アピタテラス横浜綱島」では、午前中から近隣の駅弁ファンが訪れ、ハイペースで売れ続け、午後1時過ぎには完売してしまった。午後2時前には地方の銘菓などを販売する「うまいもん市」に売り場を衣替え。二毛作の催事企画に成功していた。
伝統があるだけに、ユニーの駅弁大会における売れ筋は超有名駅弁で占められている。群馬県横川駅「峠の釜めし」、富山駅「ますのすし」、北海道森駅「いかめし」がトップ3となっている。
特に、峠の釜めしは開店後の午前11時頃に遅れて到着。当日の朝に製造された出来立ての駅弁がワゴンに山積みにされ、飛ぶように売れていった。
京浜急行線沿線を中心に展開する京急ストアでは、週末を中心に3日間連続の駅弁大会を時折開催し、約20種類の駅弁を販売している。ますのすしのような有名駅弁が中心のイベントではある。しかし、京急ストアの面白さは、既存の駅弁に飽き足らず、自ら駅弁風の弁当を開発し、店内調理で提供していることだ。
今年3月、横浜市内の店舗など14店で開催された駅弁大会では、「鎌倉名物海老玉丼」や「愛媛名物焼豚玉子丼」を独自に開発。出来立てを販売した。
特急電車を描いた紙箱に、2段重ねになった海苔弁が入った「京急2100形電車のりだんだん弁当」は、好評につき再発売。「のりだんだん」は、京急沿線の横須賀市内で普及しているユニークな海苔弁(ソウルフードといわれる)で、ご飯とご飯の間にもう一枚の海苔が敷かれている。郷土を発信する創作駅弁といえるだろう。
イオンでは、昨年9月のシルバーウイークに、同社としては初の本格的な駅弁イベントを開催。都内など77の店舗で全国の駅弁や特産品といった200品目を販売した。神戸の駅弁業者・淡路屋の「ひっぱりだこ飯」、九州の駅弁業者・松栄軒の「うまか!博多鯛しゃぶ穴子弁当」など、売れ線の駅弁を出品。連日ほぼ完売するほどの反響を呼んだ。
この後、イオンは駅弁や地方の名産品を集めたイベントを折に触れて開催しており、集客が好調であることがうかがえる。
今年のゴールデンウイーク期間中(5月3〜5日)には、イオン熱田店など東海地区の5店で「おうちで旅気分」イベントと銘打って、100種類の駅弁、銘菓、カップ酒などを販売した。温泉気分も楽しんでほしいとの思いから、草津、箱根、有馬など全国21の名湯の薬用入浴剤「名湯百景」も一緒に販売。自宅で観光に行った気分に浸れるように、演出の工夫を凝らしている。
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