駅弁は、列車の高速化やモータリゼーションの進展に大きく影響を受けてきた。コロナ禍の前から、地元のローカルな駅では売れなくなっていた。いかめしの森駅における1日の平均乗車数は277人(19年)、峠の釜めしの横川駅は165人(20年)、「氏家かきめし」の厚岸駅は127人(19年)、「かにめし」の長万部駅は乗降客数が296人(18年)。これらは、駅弁大会で常に上位に入る超人気駅弁だが、この利用客数では、いくら駅で頑張っても経営が成り立つはずがない。
こうした地方の駅弁は、京王をはじめとする百貨店の駅弁大会に出店することで名を売り、マスメディアの報道によって脚光を浴びて、ふるさとの代表としてのブランドを身に付けた。そして旅行のマストアイテムとなり、駅以外の高速道路のサービスエリアや郷土物産を販売する催事でも売れるようになった。
さらに、今回のコロナ禍で、生活に身近なスーパーや通販でも売れる、旅行気分を味わう一般的な商品へと、もう一段の進化を遂げつつあるといえよう。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
新刊『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか? 挑戦する郷土の味』(交通新聞社新書)が10月15日に発売されました!
駅弁といえば、かつては駅や列車内で買って食べる、列車旅に欠かせないものだった。それが今やスーパーでも見かけるほどに、日常的で身近な存在となっている。
元は「駅の駅弁」だったのになぜ、駅を離れて販路を広げることができたのか?
列車の高速化やモータリゼーションの煽りを受け、さらにコロナ危機にも直面し、駅で売れない状況に追い込まれながらも生き残る、駅弁の謎に迫る一冊。
◆「駅で売れない駅弁」だった?「いかめし」ヒットの理由を探るべく、いかめし阿部商店・今井麻椰社長にインタビュー!
◆コラム「駅弁はなぜ、高いのか?」など
◆巻末には「京王百貨店駅弁大会歴代売り上げベスト5」収録
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