ネット証券最短で100万口座到達のLINE証券 次の狙いは?金融ディスラプション(1/2 ページ)

» 2021年11月02日 10時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 スマホ証券のLINE証券が、サービス開始から2年2カ月で100万口座に到達した。約130万口座である松井証券やauカブコム証券を、口座数でいえば射程に収めてきた形だ。初心者だけでなく経験者向けの機能も拡充し、総合証券化を目指してきた同社の次の狙いはどこか? Co-CEOの正木美雪氏と、米永吉和氏に聞いた。

Co-CEOの米永吉和氏と正木美雪氏(LINE証券提供)

ネット証券最速100万口座

 100万口座というのは同社にとっても1つのマイルストーンだ。開業1周年の記者会見では、2022年度に「100万口座、営業収益100億円を目指す」としており(記事参照)、この計画のうち口座数を1年前倒しで達成したことになる。規制緩和で多くのネット証券が生まれた20年前とは環境が違うが、100万口座到達までの期間はネット証券業界で最短だ。

 「コロナ禍で投資に対する興味関心が増えた。個人投資家が過去最高に伸びた。若年層、未経験者をターゲットとするなかで、両方が得られた」と正木氏は言う。

急速に口座数を拡大した。最大手のSBI証券は770万、楽天証券は620万、マネックス証券は197万。そして松井証券は136万、auカブコム証券は133万口座だ

 口座数だけでなく売買も活発だ。21年3月期の年間売買高は1兆1255億円と前期の約3倍に伸張しており、これはSBIネオモバイル証券やCONNECT、PayPay証券など他のスマホ証券の約10倍となっている。

 口座数急拡大の理由の一つはコロナ禍だ。東証が集計した個人株主数は、20年春以降に急拡大。複数の証券口座の延べ数ではあるが、20年3月から21年3月までの1年間で308万人増えて5981万人となった。この急増した投資家の多くを若年層が占め、基本的にスマートフォンで取引をするためにスマホ証券にユーザーが流れ込んだ。

 もっとも、若年層をLINE証券が総取りしたわけではない。LINE証券のユーザー属性を見ると20代と30代で54.2%を占めるが、楽天証券も21年1−3月の口座開設者のうち20代と30代で68%を占める。LINE証券は女性比率36%、投資未経験者比率64%だが、楽天証券も女性比率45%、投資未経験者比率が75%だ(記事参照)。

LINE証券のユーザー属性

 コロナ禍で若年層が投資に目覚めた中、スマホでの取引のしやすさなどの観点で、特定の証券会社に流れ込んだという形になるだろう。

 そうした若年投資家が投資したのは、少額の資金で投資が可能な単元未満株だ。通常株式は100株からの取り引きだが、1株から売買可能にする仕組みで、スマホ証券各社はそれぞれこれを特徴としている。実際、18年に498万人しかいなかった単元未満株株主は、SBIネオモバイル証券、LINE証券、CONNECTが相次いで単元未満株取引を開始した結果急増した。20年には723万人と約1.5倍に増加している。

単元未満株主はスマホ証券各社の開業以降、急増している。直近ではマネックス証券、SBI証券も単元未満株の買付手数料を無料化するなど、注目が増している 
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