日本のインフラを守れ 極小空間を飛行点検する純国産ドローンがすごい(1/2 ページ)

» 2022年01月06日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 災害の多発やインフラの老朽化が進む日本において、その点検業務は重要度を増している。一方で、インフラ点検は狭く危険な場所に人が入る必要があり、簡単にいくものではない。そんな市場において、インフラ点検に特化した純国産ドローンの利用が進んでいる。

 開発元のLiberawareの閔弘圭CEOは、「リニア崩落事故でも、人が確認作業に入って事故が起きた。本当はドローンが代わりにやっていれば防げた」と話す。

Liberawareの閔弘圭CEO

 閔氏がドローンに出会ったきっかけも、インフラの災害に関するものだった。3.11の時にメルトダウンを起こした原子炉の内部を調査するプロジェクトが経産省で立ち上がった。そのとき、当時千葉大学で研究員をしていた閔氏も参加。ドローンで調査ができないかと議論したが、当時のドローンは直径が1メートルくらいあり、屋内空間の調査に使うには大きすぎた。

 「確認したいけど、簡単には見えない空間がたくさんある。そういう空間をドローンで見えないか」(閔氏)という思いが、Liberawareの創業につながった。

 実際にインフラ内部を飛べるドローンの開発には2年かかったという。ドローンに用いる部品はすべて国産だ。ドローンのプロペラを回すモーターは、日本電産と共同開発したもの。屋内空間では塵(ちり)が舞っている場所も多く、防塵性能が大事になる。普通のモーターは、回転で生まれる熱を逃がすために穴が空いているが、このモーターでは密閉し、防塵性能を高めた。放熱のために、プロペラの風が当たるように設計し、取り付け部分も熱浸透樹脂を使い、機体全体に熱を逃がすようにしている。

Liberaware社内のテスト飛行用天井裏を飛ぶドローン

 全部国産部品となったのは、「結果的に、意図的にが半々くらい」(閔氏)だという。ドローン市場では、中国のDJIが大きく先行していて、技術面でも生産量でも抜きん出いている。そん中で、日本の技術力を上げていたいという思いと、日本の町工場であれば、少ない数量でも想いに共感して作ってくれるところが純国産ドローンにつながった。

 昨今は経済安全保障の考え方が広まっており、インフラなどの国の基幹にかかわる部分では中国製品を排除する動きが盛んだ。実際、Liberawareのドローンを使うインフラの運営企業でも、部品個別のホワイトリストを作っており、「この部品は中国のものだったら危ないよね」という仕訳をやっているという。結果的に、純国産で中国部品を使っていないことが、日本のインフラ点検で採用される理由の一つにもなった。

 Liberawareのドローンは、直径20センチほどで、最大8分間の飛行が可能だ。この小型サイズを実現できたことで、「縦横30センチの空間にも入れる」(閔氏)性能となった。例えば、高さ150メートルの煙突の内部や、低い天井裏などに入っていき、内部の画像を撮影して点検できる。

操縦人員の派遣だけでなく、レンタル先の操縦者の訓練も請け負っており、社内にはドローン操縦練習用に、インフラを模したパーツがたくさんある
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