日本のインフラを守れ 極小空間を飛行点検する純国産ドローンがすごい(2/2 ページ)

» 2022年01月06日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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画像解析で3Dマップ生成、差分による劣化箇所判定も

 専用ドローンの開発だけでなく、撮影した画像の解析技術も同社の強みだ。撮影した映像から3Dモデルを作成し、まるで人が中に入って見るように自由に動き回れるバーチャル空間を生成する。特に測位センサーなどは搭載していないが、移動によって発生する視差から距離を測定し、3Dモデルを生成するという技術だ。

 さらに、1回目の撮影データと、2回目の撮影データを重ね合わせて、差分を表示する技術も持つ。これにより、どこが変化して劣化しているのかが一目瞭然となる。これまで人の目で問題点を見つけるのがインフラ点検のやり方だったが、より正確に劣化箇所が分かるわけだ。

差分技術のサンプル。スポンジに細かな凹凸がついても目視では違いが分からないが、撮影データの差分を表示すると、変化は一目瞭然だ(Liberaware)

 ドローンは屋外での利用については各社が参入し、商用利用も増加してきているが、Liberawareのような屋内での点検用途では、これまであまり注目されてこなかった。ニッチな市場だと見なされていたわけだ。しかし、国内だけでもインフラメンテナンス市場の規模は5兆円を超え、グローバルでは200兆円を超える。

 しかも、人の代わりにドローンを使う効果は安全性の向上だけではない。人が入れるように足場を作るなどの事前準備が不用となるため、点検期間の短縮が可能になる。これがインフラの稼働率を上げ、収益性向上に結びつく。

 LiberawareはJR東日本とジョイントベンチャーを設立するなど、国内の多くのインフラ企業から注目されており、2020年度のインフラ点検件数は100件、売上高は1.7億円を超えた。産業用途に使える小型ドローンの技術を持つところは限られており、最大手である中国のDJIも経済安全保障の観点から参入が難しい。「一番競合として怖いのはDJIだが、中国部品が使えない中で参入する意味はないだろう。海外では屋内空間産業ドローンはあるが、機体が倍のサイズ。これだけ小さいものは、Liberawareのほかにない」(閔氏)

 今後は、インフラ点検だけでなくデータセンターの定期点検などへの広がりを見込む。現在は、人が操縦して点検を行っているが、定期点検では自動で作成した3Dマップを元に、無人で自動的にドローンが飛んで点検できる技術を開発中だ。「決められた時間に決められたルートを、正確に飛行する。データセンター、計器監視、施行進捗、警備、棚卸しなどを想定している」(閔氏)

 ビル内部を飛ばす場合、ドアの開閉などの課題もある。しかし、人手不足などの将来を見据えた場合、人の代わりにドローンが必要とされる余地は大きい。ドローン点検を前提としたビルの設計を検討するという企業も出てきている。「ドローンがこういうことができるなら、最初から室内をそういう設計にするよ、という言葉をいただいている。現在は人が入ることを前提としていたが、将来ドローンに替えるということだ」(閔氏)

 純国産ドローンが、日本のインフラメンテナンスだけでなく、施設の点検を変えるのかもしれない。

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