この数年で急速に浸透したキャッシュレス決済。しかし、この秋からPayPayなどのコード決済サービスが加盟店手数料無料を終了することもあり、手数料の高さが課題となっている。特に影響を受けているのが、食品スーパーなどの薄利多売の店舗だ。これに対し、手数料の高い決済サービスではなく、独自のコード決済サービスを導入する動きがある。
各決済サービスの利用には手数料がかかり、それは加盟店である店舗側が負担する。一般的なクレジットカードでは2〜3%程度、コード決済ではPayPayが条件付きながら1.6%を打ち出し、業界最安値をうたう。
しかし、食品スーパーの営業利益率は1〜3%が普通で、各キャッシュレスサービスを導入すると、利益の多くが吹き飛んでしまうという構造だ。
そのため各社が力を入れるのが、自社独自の電子マネーサービス、いわゆるハウスプリペイドだ。大手では、イオンのWAONやイトーヨーカドーのnanacoをイメージすると分かりやすい。現金でチャージしてもらい、自店舗での決済に使ってもらう。多くは、「給料日にチャージすると追加還元」などの施策や、「利用でポイント還元」などのマーケティング施策とセットになっており、リピート客を囲い込む狙いでも使われる。
ハウスプリペイド市場は2020年度には3兆円を超え、コード決済の4.2兆円に迫る規模となっている(業界大手のバリューデザイン資料より)
大手以外でも状況は同じで、高い決済手数料は負担だ。そんな各社に、独自のコード決済サービスを提供するのがアララだ。これまでのプラスチックのハウスプリペイドカードに加え、11月からスマホアプリによるコード決済にも対応。導入店舗は、独自の「〇〇Pay」を提供できるようになる。新たに「アララキャッシュレス」の名称で、普及を図る。
- 客単価が1割増 もう1つのキャッシュレス、店舗のプリペイドカードが伸びる理由
「◯◯Pay」の話題が尽きることがないが、その裏側では各店舗が発行する専用のプリペイドカード(ハウスプリペイド)が活況だ。事前にチャージするという仕組みが、強力な囲い込み効果を発揮する。また、ポイントカードに代わり、スマホと連携することでCRM利用も進みつつある。
- PayPay、10月から決済手数料有料化1.6%に 他社を大きく下回る
PayPayは、これまで無料としてきた中小店舗向け決済手数料を10月1日から有料化する。月額1980円(税別)の「PayPayマイストア ライトプラン」への加入を条件に、決済金額の1.6%とする。クレジットカードが2.5〜3.75%、他のコード決済が2〜3%程度の手数料を課しているのに比べて安く、競争力を維持する狙いだ。
- コード決済市場規模4.2兆円 1年で規模3.5倍に キャッシュレス推進協議会
キャッシュレス推進協議会は、2020年のコード決済の利用状況データを公表した。2020年の決済金額は4兆2003億円となり、19年の1兆1205億円から約3.5倍に増加した。また月間アクティブユーザー数(MAU)は19年の1854万人から3636万人へと倍増した。
- 消える月謝袋 会費の支払いもキャッシュレス、会員管理も行う「会費ペイ」が急成長
習い事の月謝といえば、毎月封筒に現金を入れて手渡しし、ハンコを押してもらう月謝袋を思い出す。しかし、コロナ禍の非接触ニーズ増大にともない、こうした会費の支払いもキャッシュレス化が急速に進展している。メタップスペイメントが提供する「会費ペイ」は、個人や中小事業者を中心に利用する加盟店が3000店を突破した。
- 業界のルールはPayPayが決める 黒字化への道筋(後編)
コード決済側から見たPayPayとキャッシュレス決済全体から見たPayPayの印象が異なっていると感じる方がいるかもしれない。一方この分野でPayPayが圧倒的シェアを誇っていることは確かだ。つまり、同じ土俵で競合が勝負する限り、PayPayの施策に毎回引っ張られるということを意味しており、この分野におけるルールメーカーがPayPayになったということは揺るぎない事実だ。
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