アララが業務提携を予定している業界大手のバリューデザインと合わせると、導入企業は約1000社、店舗数は約10万店舗、年間決済額は約1兆円に上る。d払いの取扱高が2020年度で8100億円なのを考えると、こうしたハウスプリペイド市場がかなりの規模感になっていることが分かる。目立たぬ、キャッシュレスの大手なのだ。
アララキャッシュレスを導入する店舗のメリットの1つは、手数料の低さだ。アララの楠木康弘キャッシュレス事業部長は「1%を切る」としており、一般的なキャッシュレス決済に比べて業績への影響が小さい。
アララの楠木康弘キャッシュレス事業部長
キャッシュフローが改善するのが2つ目のメリットだ。クレジットカードやコード決済では、顧客が利用したあと数日から1カ月後に店舗には決済金額が入金される。一方で、ハウスプリペイドでは、顧客が事前に入金をする形なので、決済に使われる前からキャッシュが入ってくる。
割引キャンペーンなどの自由度も高い。PayPayなどは大規模なキャンペーンを定期的に行うが、店舗側からするとキャンペーンに「乗るか、乗らないか」という選択しかない。さらに、ハウスカードならば、キャンペーンでポイントなどを追加還元しても自社店舗でしか使えないので、来店促進にも効果がある。
キャッシュレスサービス比較。手数料は最も安く、キャンペーン自由度が高いことが特徴だ(アララ資料より)
- 客単価が1割増 もう1つのキャッシュレス、店舗のプリペイドカードが伸びる理由
「◯◯Pay」の話題が尽きることがないが、その裏側では各店舗が発行する専用のプリペイドカード(ハウスプリペイド)が活況だ。事前にチャージするという仕組みが、強力な囲い込み効果を発揮する。また、ポイントカードに代わり、スマホと連携することでCRM利用も進みつつある。
- PayPay、10月から決済手数料有料化1.6%に 他社を大きく下回る
PayPayは、これまで無料としてきた中小店舗向け決済手数料を10月1日から有料化する。月額1980円(税別)の「PayPayマイストア ライトプラン」への加入を条件に、決済金額の1.6%とする。クレジットカードが2.5〜3.75%、他のコード決済が2〜3%程度の手数料を課しているのに比べて安く、競争力を維持する狙いだ。
- コード決済市場規模4.2兆円 1年で規模3.5倍に キャッシュレス推進協議会
キャッシュレス推進協議会は、2020年のコード決済の利用状況データを公表した。2020年の決済金額は4兆2003億円となり、19年の1兆1205億円から約3.5倍に増加した。また月間アクティブユーザー数(MAU)は19年の1854万人から3636万人へと倍増した。
- 消える月謝袋 会費の支払いもキャッシュレス、会員管理も行う「会費ペイ」が急成長
習い事の月謝といえば、毎月封筒に現金を入れて手渡しし、ハンコを押してもらう月謝袋を思い出す。しかし、コロナ禍の非接触ニーズ増大にともない、こうした会費の支払いもキャッシュレス化が急速に進展している。メタップスペイメントが提供する「会費ペイ」は、個人や中小事業者を中心に利用する加盟店が3000店を突破した。
- 業界のルールはPayPayが決める 黒字化への道筋(後編)
コード決済側から見たPayPayとキャッシュレス決済全体から見たPayPayの印象が異なっていると感じる方がいるかもしれない。一方この分野でPayPayが圧倒的シェアを誇っていることは確かだ。つまり、同じ土俵で競合が勝負する限り、PayPayの施策に毎回引っ張られるということを意味しており、この分野におけるルールメーカーがPayPayになったということは揺るぎない事実だ。
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