優秀なエンジニアを確保するために何をすべきか ニチガスに聞く“2025年の崖”を超える方法DX人材が足りない(2/3 ページ)

» 2021年12月14日 07時00分 公開
[小林泰平ITmedia]

松田: 日本は、決められたビジネスモデルの中で給料をもらう世界に慣れた人が多いからか、市場を作ることに楽しさを感じる人材が少ないと感じます。サービスの価格決めから顧客拡大まで、全ての作業を担うので確かに大変ですが、この人材がいなければ事業化は難しい。それをどう確保するか、あるいは自社で育てるか。

小林: そういう人材は大企業に入るより、スタートアップで起業する道を選ぶかもしれません。特に今は、投資マネーが潤沢にスタートアップへ入る市場環境なので、起業家は自分の仮説を信じてチャレンジしやすい。もしかすると、そういったスタートアップこそ、事業化を支援する立場としてニチガスのようなアセットのある企業と組むべきかもしれません。

 ちなみに、事業化の道筋として松田さんは現時点でどんなプロセスを描いていますか。すでに新規サービスはいくつかできていて、事業化の“タネ”はそろっている状態です。後はどうグロースさせるかですよね。

松田: これはイノベーター理論(※)で考えるのが良いと思っています。ニチガスに当てはめると、すでにサービスは作ったので、新しいものが普及する過程の最初期に当たる“イノベーター”はクリアした。次はどうやってアーリーアダプター、アーリーマジョリティへと市場拡大できるかです。

※イノベーター理論……新しい製品やサービスについて、市場に普及する過程を5つの層に分類したマーケティング理論。5つの層が市場に占める割合も考えられており、「イノベーター(2.5%)」「アーリーアダプター(13.5%)」「アーリーマジョリティ(34%)」「レイトマジョリティ(34%)」「ラガード(16%)」となっている。

小林: サービスをゼロイチで生み出すフェーズをクリアすれば、あとはフレームワークに沿って丁寧に拡大する作業がメインになるので、むしろ日本人の真面目さが生きる分野ですよね。ここは地道な作業を繰り返していくことで進む気がします。スタートアップを見ていると、華麗にサービスを事業化しているイメージを抱いてしまいますが、それはあくまで幻想で、多くは泥臭くコツコツ取り組んで花開いていますから。むしろこのフェーズから拡大させる作業は、日本企業の得意技ではないでしょうか。

優秀なエンジニアを確保するために、企業は何をすべきか

photo 日本瓦斯 執行役員 エネルギー事業本部 情報通信技術部 部長 松田祐毅氏

松田: もう一つ、DXの課題を挙げるなら、エンジニア不足ですよね。根本的にテクノロジーに強いエンジニアがどうしても少ない。

小林: それは大きいと思います。日本は全体的にエンジニアの給与水準が低く、また、若いからという理由だけで安くなる市場環境があります。エンジニアこそ年齢は関係ないですし、むしろ若い方が高くても良いケースさえあると思うほど。これだけ世界中からエンジニアが求められる時代では、大げさではなく、20代で何千万円の年収を提示しても良い状況です。

松田: かといって、各企業には今まで続けてきた給与体系があるので、そこから逸脱した待遇でエンジニアを雇うのは難しい部分もあります。

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