松田: ではどうするかといえば、デジタイゼーションであれ、デジタライゼーションであれ、デジタルによってもうかる事業や効果を生み続けて、エンジニアの価値を社内に浸透させるべきです。仮にデジタルで新しいビジネスを作って粗利を取れれば、もっとお金をかけてエンジニアを確保するようになるはずです。
小林: 前回お話しした小さなDXをどんどん実行することが大切ですよね。少しずつでもデジタルの成功体験を積み重ねれば、社内にデジタルのファンが増えてくる。それは、若いエンジニアを求める企業姿勢や、高待遇で迎える環境づくりにもつながるでしょう。
松田: エネルギー業界にとっても、デジタルの活用は大きな可能性があるんです。例えば今、AIが各家庭の電力消費を分析し、最適な電力供給をプランニングする技術が生まれています。国内には約5000万の世帯があり、それだけのAI推論モデルを行えるかもしれない。これはもうAI会社の事業ですよね。
それだけではありません。電力自由化が進みましたが、今後さらにエネルギーの自由調達が広がれば先物市場を作れる未来も浮かびます。もちろんまだ未整備ですが、先物市場ができれば、われわれは金融会社になれる可能性もある。すると、どれだけエネルギー事業が衰退しても、AIや金融事業という次の柱を作れるでしょう。
こういった未来を想定したときに、今からデジタルによって新たなサービスを作り、会社を変えていくことが重要になると思うのです。
小林: エネルギー会社がAIや金融の事業を行うと聞くと、かなり突飛(とっぴ)な印象を抱きますし、ひとっ飛びでやるのは難しいでしょう。かといって、何もしなければ新しい事業は生まれませんし、デジタルでは「2025年の崖」に直面する。
大切なのは、小さいことでいいので、まずは足元でデジタイゼーションをしつつ、同時に遠い未来の突飛なデジタライゼーションを考えておくことではないでしょうか。小さなデジタルの成功体験を重ねながら、それと未来の壮大な新事業をつなげて道筋を探ることが重要かもしれません。ニチガスの例で分かるように、自社の土台を固めるデジタル化が、実は将来の非連続的なビジネスにつながっているのです。
松田: そうですね。私たちも、いずれエネルギーを扱わない企業になるかもしれないと考えることもあります。そういった突飛な未来と、足元の小さなデジタイゼーションをつなげる。それもDXにおいて大切だと思います。
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