販売機会を減らさずに得意先の売掛金を完全回収するためには、できるだけ早く得意先の信用度に影響を及ぼす情報を入手する必要がありますが、経理部だけではそのような役割を貫徹することができません。
例えば、得意先の敷地内にたくさんの在庫が積まれていたり、得意先の従業員の士気が異常に低かったり、得意先のキーパーソンと思われる人物が退職していたり、といった情報は、危険な兆候そのものになります(図表3)。
このような情報に早い段階で触れる機会があるのは、経理部の人間ではありません。すでに得意先の人と顔なじみであり、得意先に出向く機会が多い営業部の担当者です。
そこで、経理部としては、このような情報を収集する機会が多くある営業部の担当者たちに、得意先の信用度に影響を及ぼすような情報を入手したら経理部へ直ちに報告するように協力してもらう必要があります。
前述の通り、危険な兆候を示す情報に気が付くためには、与信マインドを持っていなければなりません。
営業部の担当者にも、与信マインドを持って行動することが必要であることをしっかり理解してもらいましょう。
一般的に営業部は、経理部のように得意先の売掛金の回収責任を日頃から負っているわけではありません。
得意先の売掛金の回収が難しくなってきてから責任を問われることが多いため、自分が担当している得意先の問題が表面化するまでは貸倒れリスクに対する意識が低く、与信マインドが育ちにくいという事情があります。
営業部の担当者に与信マインドを持つ直接的なメリットを提示することは難しいのが実情です。
そこで、「与信マインドを持って行動しなければ、結果的に会社そのものが危機的状況に陥る可能性がある」というデメリットの観点から説明する方法もあります。
販売するだけでは会社の経営は成り立ちません。代金を回収するまでが仕事であるとの認識を持ってもらいましょう。
経理部と営業部が連携することで多くのメリットを享受するのは経理部です。そのため、経理部が主体になって、両部門が上手に連携できるように働きかける必要があります。
営業部が非協力的な場合には、経営者層を巻き込んで、営業部が経理部と連携しなければならないような仕組みを会社として整備してもらうことも考えましょう。
大企業では審査部などを設置して、経理部や営業部からは独立した立場で与信限度額の審査などを専門的に行わせている場合があります。
中堅・中小企業であっても人員に余裕があるようなら、審査部を設置することを経営者層に進言してみるのもよいかもしれません(図表4)。
白石茂義公認会計士事務所/公認会計士。会計コンサルタントとして、会計の力を使って経営課題の見える化を行い、会計の枠を超えて、企業経営の改革や組織・人事評価制度の構築などのアドバイスをしている。
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