なお、経済産業省によれば、製造業現地法人の海外生産比率(国内全法人ベース)は1999年度で11.4%でしたが、2019年度は23.4%に増加しています(図表2)。輸出の増加率が相対的に小さかったのは、このような日本企業の海外進出の動きも一因と思われます。また、経常収支を構成する項目では、第一次所得収支の黒字増加(増加率+231.2%)が顕著ですが、これは過去に積み上げた対外金融資産から生じる利子や配当金などです。
日本企業の海外生産比率
したがって、経常収支をみる限り、日本はこの20年間で、輸出で稼ぐ構造から対外金融資産で稼ぐ構造へと変化したと判断されます。そのため、原油など輸入品の価格が上昇するなかでの円安は、悪い円安と評価されやすくなりますが、その一方で、円安進行は対外金融資産の円ベースでの評価額を押し上げることになります。このように、近年の経常収支構造の変化によって、円安の評価も変わってきたように思われます。
旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。
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- 東芝などにみられる会社分割の動きについて
このところ、大手企業による会社分割の動きが続いています。米国ではゼネラル・エレクトリック(GE)が、またジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)も11月12日、会社を分割すると発表しました。日本でも東芝が11月12日、会社を「インフラサービス会社」「デバイス会社」「資産管理会社」に3分割すると発表しました。
- 2021年4-9月期決算の総括と市場の受け止め
東証株価指数(TOPIX)を構成する3月期決算企業のうち、11月16日時点までに4-9月期の決算発表を終えた企業は1300社を超えました。企業数ベースの進捗率は99%台に達し、決算発表はほぼ終了しました。
- 金融所得課税と1億円の壁
足元で続く日経平均の下落は岸田氏が掲げる金融所得課税の見直しを嫌気した反応との声も。金融所得税率が一律のため年間所得1億円超で所得税負担率が低下する1億円の壁が発生。金融所得課税の見直しは、株安要因の1つと思われるが、市場では冷静な物色の動きもみられる。
- 中国電力不足問題に関する考察
中国では現在、電力不足が深刻化。目先の経済成長率の維持よりも、温暖化対策など中長期の改革を重視する姿勢に転じたと考えられます。日経平均株価にとっても、目先は中国のこれらの問題が、上値をおさえる要因になると思われます。
- 2021年4-6月期決算のチェックポイント
日本では、今週から3月期決算企業による2021年4-6月期の決算発表が本格化します。東京証券取引所が公表している資料によると、市場第一部上場の3月期決算企業のうち、今週は546社、来週は759社が、決算発表を予定しています(7月15日時点)。これらの社数は、それぞれ全体の37.0%、51.4%に相当し、決算発表はこの2週間に集中することになります。