良い円安と悪い円安について考える市川レポート 経済・相場のここに注目(2/2 ページ)

» 2021年11月29日 12時55分 公開
[市川雅浩三井住友DSアセットマネジメント]
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日本は輸出で稼ぐ構造から、対外金融資産で稼ぐ構造へと変化、円安の評価も変わってきている

 なお、経済産業省によれば、製造業現地法人の海外生産比率(国内全法人ベース)は1999年度で11.4%でしたが、2019年度は23.4%に増加しています(図表2)。輸出の増加率が相対的に小さかったのは、このような日本企業の海外進出の動きも一因と思われます。また、経常収支を構成する項目では、第一次所得収支の黒字増加(増加率+231.2%)が顕著ですが、これは過去に積み上げた対外金融資産から生じる利子や配当金などです。

日本企業の海外生産比率

 したがって、経常収支をみる限り、日本はこの20年間で、輸出で稼ぐ構造から対外金融資産で稼ぐ構造へと変化したと判断されます。そのため、原油など輸入品の価格が上昇するなかでの円安は、悪い円安と評価されやすくなりますが、その一方で、円安進行は対外金融資産の円ベースでの評価額を押し上げることになります。このように、近年の経常収支構造の変化によって、円安の評価も変わってきたように思われます。

市川 雅浩(いちかわまさひろ) 三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。

現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。

著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。

CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。


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