中国では現在、電力不足が深刻化していますが、これは石炭を主燃料とする火力発電所の発電抑制が主因とみられます。中国政府は、2030年までに二酸化炭素の排出量をピークアウトさせ、2060年までに実質ゼロとすることを目標とし、地方政府にエネルギー消費量抑制などを課しています。今年8月には、抑制が不十分と指摘された地方政府もあり、ここにきて電力の供給制限が一気に強まったと推測されます。
また、石炭価格の上昇で(図表1)、電力会社が十分な燃料を確保できないことも、電力の需給ひっ迫につながっています。さらに、中国政府は新型コロナウイルスの発生源を巡りオーストラリアと対立しており、オーストラリア産の石炭や農産物などの輸入を制限する事実上の制裁を続けています。オーストラリア産の石炭は、中国の輸入石炭の25%強を占めていましたが、昨年から輸入は止まっており、石炭は品薄状態にあります。
なお、9月30日に発表された中国の9月製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.6と、昨年2月以来、1年7カ月ぶりに景況改善と悪化の境目である50を下回りました。電力不足で工場の稼働が制限されたとの指摘もあり、実体経済への影響が懸念されつつあります。中国の電力不足がどの程度続くかは見通しにくい状況ですが、年内の製造業PMIは50割れが続くことも想定されます。
これまで、中国政府は、来年にかけて景気支援型の政策スタンスを強めるとみていましたが、最近の動きを踏まえると、目先の経済成長率の維持よりも、温暖化対策など中長期の改革を重視する姿勢に転じたと考えられます。そのため、弊社は中国の実質GDP成長率について、2021年の見通しを前年比+8.3%から+8.0%に下方修正し、2022年の見通しについても、同+5.5%から+5.2%に下方修正しました(図表2)。
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