日産自動車は11月29日、長期ビジョン「アンビション2030」を発表し、次世代バッテリーである全固体電池を使った電気自動車(EVを投入)を2028年に市販する計画を明らかにした。
全固体電池について話す日産の内田誠社長
次世代バッテリーとして知られる全固体電池の自社開発を進めており、24年にパイロット工場を立ち上げ試作を開始。26年までに1400億円を投じ、28年に搭載したEVを市販する。日産の内田誠社長は「リチウムイオン電池と性能が同じなら開発の意味はない。航続距離や充電時間など、EVの使い勝手を大幅に向上させる」とした。
具体的には、エネルギー密度はリチウムイオン電池の2倍、充電時間は3分の1に短縮することを目標とする。これによって、大型車両のEV化が可能になる。さらにkWhあたりのコストを65ドルまで引き下げ、「EVの車両コストをガソリン車同等まで引き下げる」(内田氏)とした。
全固体電池は安全性が向上するだけでなく、性能の大幅向上と価格の低下を見込む
日産の長期ビジョンの要は、電動化と自動運転などの知能化だ。これまで電動化技術には1兆円を投資してきたが、今後5年間でさらに2兆円を投資。30年までに電動車比率を50%以上に引き上げる。
5年後の26年には、EV軽自動車を含め電動化車両を23車種投入。比率を40%以上に引き上げる。
自動運転関連技術については、自動運転の“目”にあたる、次世代LiDAR技術を20年代半ばまでに開発を完了し、30年までにほぼすべての新型車に搭載する計画だ。日産の自動運転技術「プロパイロット」を搭載した車両は現在100万台規模だが、5年後には250万台へと引き上げる。
全固体電池を床面に敷いたプラットフォームを構想。EVパワートレインの主要部品統合も進め、26年までに30%のコスト削減を行うという
6000億円を超える赤字に転落するなど、苦境にあった日産だが、「黒字化の見通しが立つまで来た」と内田氏は話し、「営業利益率5%以上はしっかり確保」した上で、大きな投資を進める。
EVのコンセプトモデル3車種も披露した。オープンカーの「MAXOUT」、マルチSUVの「HANGOUT」、ピックアップトラックの「SURFOUT」
- 減収減益の日産決算 21年度は440万台、黒字化目指す
日産自動車は5月11日、2020年度の決算を発表した。売上高は前年から2兆円減少し7兆8600億円、営業利益は1100億円減少し1507億円の赤字だった。
- “大赤字”日産が、契約社員の正社員化に踏み切ったワケ 期間工は対象外
日産自動車は同社の拠点で雇用する事務職約800人の契約社員を、原則全員正社員として登用することを決定したという。日産が契約社員の正社員化に踏み切った背景には、どんな要因が隠れているのだろうか。
- 日産にZ旗を掲げた覚悟はあるか?
フェアレディZの復活で、自動車クラスターは大盛り上がり、それは喜ばしいことである。写真を見て、筆者もとても好意的に捉えたし、タイミングさえ間違えなければこれは売れるだろう。日産関連としては久方ぶりの朗報なのだが、ホッとしてはいられない。肝心の母体の調子がよろしくないのだ。
- トヨタ、ホンダ、スバル、日産が減産 自動車用半導体がひっ迫した3つの理由
世界中の自動車生産工場が新型コロナウイルスに翻弄されている。2020年後半に急速に業績を回復させたメーカーが多い一方で、ここへきて再び生産を調整しなければならない状況に追い込まれている。その理由となっているのが、半導体部品の不足だ。
- 「20モデル以上の新型車」はどこへ? どうなる日産自動車
財務指標はほぼ全滅という地獄の様相となった日産の決算。問題に対してすでに適切な手を打ってあり、今決算には間に合わなかったものの、回復を待っているというのならともかく、ただひたすらに悪い。そうした全ての状況に対して、ようやく大筋の方針が出来、これから個別の具体策策定に着手するという状況で、未来が全く見えない。念のためだが、決して未来がないといっているのではない。日産の未来は現状、皆目見当がつかないということだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.