1本1万円以上の傘が、なぜ3年目に10倍も売れたのか週末に「へえ」な話(3/4 ページ)

» 2021年12月04日 08時08分 公開
[土肥義則ITmedia]

開発に3年

 アパレルの世界に飛び込む――。と聞けば、競争の激しいレッドオーシャンの世界で戦わなければいけないという印象を受けるが、同社はレッドの中でも「青い海はないか」「勝負しなくても戦える領域があるのではないか」などと考え、「1万円以上の傘」を開発することにしたのだ。

 傘の名前は「カーボンテクノロジーポータブルアンブレラ」。その名の通り、傘の中棒にカーボンを採用している。釣り好きの人であれば想像できると思うが、釣り竿は長時間持ち続けなければいけないので、メーカー側は「少しでも軽く」「前のモノよりも1グラムでも」といった感じで、軽量化にチカラを入れている。

 グローブライドもカーボン製の釣り竿を開発してきたので、「中棒にカーボンを使うことはそれほど難しくないかなと考えていましたが、想像以上に大変でした」(小林さん)と振り返る。

 釣り竿を想像していただければ分かると思うが、カーボンは曲げに強いものの、ちょっとした傷に弱い。傘を設計するにあたって釣り竿のように、何本も引き出せるような構造を考えていたので、基本的に金属の使用は頭の中になかった。部品を使わなくても引き出せて、収納もできるようなモノを設計していた。しかし、である。どうしても穴を開けなければいけないところが出てきて、そうすると耐久性という課題が浮き彫りになったのだ。

 ちょっと使っただけで壊れてしまってはいけないので、「ああでもない、こうでもない」と議論を重ねていく。そうすると、また違うところに問題が出てきて、何度も試作品をつくることに。カーボンを使うことに対して、豊富な知見があるのにもかかわらず、「開発に3年もかかりまして。特許も6つ取得しました」(小林さん)という。

重さはわずか76グラム

 できあがったのは、長さ50センチで重さは76グラム。傘などを製造しているムーンバットが行った調査によると、折り畳み傘を購入する際に重視していることとして、「重量が軽い」(81.8%)ことを挙げる人は多く、そうしたニーズにも合致したアイテムに仕上げた。

 また、釣り具メーカーということもあって安全性を重視し、骨は6本タイプを採用した。同社によると、当時、6本骨では82グラムが最軽量だったので、いきなりトップに立つことができたのだ(5本骨ではもっと軽いモノがある)。

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