や、ちょっと、話がそれてしまった感もあるが、世界的に有名な釣り具メーカーがなぜアパレルに進出したのだろうか。竿、リール、糸など、さまざまな商品が売れに売れているので、いわば“左うちわ”の状況である。釣り人用のベストやレインコート、帽子などは扱っているものの、アパレルが本業ではない。畑違いの世界に飛び込むには「リスクが高すぎるのではないか」と思えたが、会社には会社なりの悩みがあったようで。
それは「一本足打法」であること。
事業担当者の小林謙一さんに聞いたところ、「この先も釣り業界が成長を続けていくかどうかは分かりません。社内に蓄積した技術を使って何かできないか。このようなことを考えたときに、アパレルの世界に進出してみてはどうかと考え、事業展開することを決めました」とのこと。
ふむふむ。確かに「一本足打法」は、不安といえば不安である。例えば、カメラのフイルム業界の歴史が分かりやすい。米国のコダックはデジタル化の対応が遅れてしまって、12年に倒産。一方、ライバルの富士フイルムはヘルスケアなどの事業に進出したことで、いまも成長を続けているのだ(22年3月期は過去最高の営業利益を見込んでいる)。
コダックのようになってはいけないと感じたグローブライドは、第二の柱としてアパレルの世界に目をつけたというわけだ。とはいえ、どこの世界も甘くないように、この業界も猛者たちがそろっている。歴史があるブランドもたくさんあるし、差別化戦略が上手なところもあるし、低価格で質のいいアイテムをたくさん出す会社もあるし、異業種からの参入でうまくいっているところもある。
釣り具メーカーからの参入になると、消費者は「釣り人が使っているレインコートをちょっとオシャレにしただけでしょ。で、機能性をうまく宣伝して、ワタシたちを釣ろうとしているのでは?」などと想像しているのかもしれない。異業種参入の成功事例を参考にしたのかどうか聞いたところ、「他社の後追いのようなことはしたくなかったですね。これまでになかった商品を開発することで、お客さまに『あ、これいいかも』『こーいうモノが欲しかったんだよね』と思われるようなブランドができないか。そんなことを考えていました」(小林さん)
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