1本1万円以上の傘が、なぜ3年目に10倍も売れたのか週末に「へえ」な話(4/4 ページ)

» 2021年12月04日 08時08分 公開
[土肥義則ITmedia]
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ニーズとシーズを組み合わせる

 開発に時間をかけて、商品はようやく完成した。価格が価格なので、社内からは「絶対に売れないよ」「たくさん返品されるのでは」といった声があったが、2カ月ほどで完売。2年目は前年の2倍もの数をつくったが、それも完売。じゃあ、3年目はまた2倍もつくったのかなと思っていたところ、なんと10倍もつくったのだ。「さすがに完売は難しいのではないか。売れ残ることを覚悟しましたが、ほぼ完売しました」(小林さん)

 飛ぶように売れているとなると、他社から同じような商品が出てきてもおかしくないが、いまのところ見当たらない。なぜか。先ほど紹介したように、カーボンを加工することが難しいからだ。本業でやっている会社が開発に3年も要したということは、知見がない会社が手を出しても、すぐに完成させることは至難の業といったところだろう。

 グローブライドの技術は、カーボンの加工だけではない。釣り糸の素材を加工して服をつくったところ、耐久性と軽量化を実現したモノを完成させたり、ニットに使う糸に撥水加工を施すことで水をはじく商品をつくったり。となると、気になるのは、次にどんな商品が生まれてくるかである。

釣り糸「ダイニーマ」の素材を使ったアイテムも好評

 詳細は明かしてくれなかったが、「釣りに関係する技術はたくさんあるので、それを商品化に落とし込んでいかなければいけません。傘を発売したときに、お客さまから『こういうモノが欲しかったんです』と言われたんですよね。このようなことを感じられる商品を世に出していきたいですね」(小林さん)と語る。

 消費者のニーズ(需要)と企業のシーズ(技術力)で考えると、グローブライドの場合、シーズはたくさんある。しかし、アパレルの経験がまだ浅いので、どんなニーズがあるのかを研究し続けなければいけない。そして「これだ!」と仮説を立てることができ、自社が保有する技術とうまくマッチングさせることができれば……。アパレル界でも、ひょっとしたらひょっとして“大漁”ののぼり旗を立てることができるのかもしれない。

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