たった1時間で設計ができる? 「家づくりアプリ」がいろいろスゴいゲーム感覚で設計(3/5 ページ)

» 2021年12月06日 08時08分 公開
[小林香織ITmedia]

「気候変動」と「地域の課題」に配慮した住宅

 ネスティングのメリットについて、秋吉氏は、気候変動への対策と地域の課題解決にも言及した。ネスティングには、環境性能が高い住宅テンプレートが用意されており、周辺地域で採取される木材の利用も可能だ。

北海道弟子屈町のプロトタイプの施工の様子。広々とした空間内に柱がない設計だ(写真提供:HayatoKurobe)

 例えば、北海道弟子屈町に完成したプロトタイプの住宅は、極限まで断熱性能と気密を高めるだけでなく、地元の温泉熱を利用して、エネルギー使用量を最小限に抑える工夫がされている。木材には炭素を吸収する性質があるため、炭素排出量も削減できる。

 また、ヴィルドがこれまでの事業で培ってきたデジタル製造プロセスを活用することで、大空間中に柱がない設計になっているため、増改築や転用も容易になるという。

 「弟子屈町は年間平均気温が5.4度、ときにはマイナス20度にも冷え込む寒冷地ですが、気密と断熱性能を高めたことで、床に設置した1台のエアコンで温風を循環させ、快適な温度に保つことができます。ただし、省エネルギー設計の建築にはコストがかかるため、エコロジーな設計はオプションとしています」

 建築業界のイノベーションと共に同社が目指すのが、地域の課題解決。ネスティングでは、地域の木材を使い、どの工務店でも建てられる構法を採用している。これは、それぞれの地域が持つ課題を解決したいという思いが背景にある。

 「僕らは、寒村地といわれる人口の少ない地域でも活動しています。3D木材加工機『Shopbot(ショップボット)』を地域の工務店に販売したり、地域で建築物やパビリオンを建てたり。ただ、都心から来た建築家が一時的に滞在しても、地域の本質的な課題解決にはいたらない。地元の人たちが自ら家具や建築をつくることができる技術基盤を提供することで、寒村地の課題を解決できるのではないかという仮説のもとに、事業を展開しています」

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