電子帳簿保存法、電子受領データ保存に2年の猶予確定 広がる混乱

» 2021年12月10日 17時59分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 2022年1月に施行される改正電子帳簿保存法において、新たに始まる「電子データで受け取った書類の電子保存義務」が2年間猶予される。22年度税制改正に盛り込まれた。年内に省令改正を行う。

 改正電子帳簿保存法は、企業が国税の重要書類を電子的に保存することを推進する法律。これまで厳しい要件があったが、2022年1月の改正で大幅に緩和され、電子化を進める企業の増加が見込まれている。一方で、電子化を考えない企業にとっての影響も大きい。電子データで受け取った書類は、従来通り紙に印刷して保存が認められず、国税庁が求める要件に沿って電子的に保存しなくてはならないからだ。

令和4年度税制改正大綱に、「電子取引の取引情報に係わる電磁的記録の保存への円滑な移行のための宥恕措置の整備」として、2023年12月31日まで、猶予する経過措置が盛り込まれた(p.90)。当初の報道にあった、税務署への事前の届出も不要になった模様だ

 これに対応するには、ソフトウェアを導入するか手作業で対応しなくてはならないが、法改正の認知度が低かったこともあり、どのように対応するかで企業には混乱が広がっていた。

 当初は電子保存義務を怠ると青色申告の取り消しリスクがあるとされていたが、11月に入って国税庁は「直ちに青色申告が取り消されるわけではない」と方針を転換(記事参照)。さらに、今回2年間の猶予を設けるなど、なし崩しに対応を緩和させてきた。

電子化推進の法が、逆に紙を増やす方向に

 背景には、電子化を推進するはずの法律が、逆に紙でのやりとりを増やしかねないという懸念があった。完全電子化を予定していない企業にとっては、電子保存義務は紙と電子の二重管理が必要になってしまう。であれば、取引先から書類を紙でもらうようにすれば、すべて紙で統一できるからだ。実際に取引先に「書類は今後、すべて紙で送ってほしい」という対応を取った企業もある。

(写真提供:ゲッティイメージズ)

 2年の猶予が生まれたことで、「紙でもらう」という電子化逆行の動きをする必要はなくなった。一方で、早くから電子保存の対応に向けて準備を進めてきた企業からは、なぜこんな直前のタイミングで変更するのか、という恨み節も聞かれる。影響範囲が広い割に、法改正の認知が低かったため、混乱が広がった。税理士や会計事務所からも、「国税庁が詳細な情報をアナウンスしない」という批判があった。

 今回の発表も、正式発表前に一部のメディアが報道するなど、広報やコミュニケーションのあり方に課題を残した。

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