今年の4月、東急がこのサービスを発表したところ、どのような反響があったのだろうか。30泊プランの定員50人に対し、727人(倍率14.5倍)が応募。60泊プランも定員50人に対し、206人(同4.1倍)が応募するなど、合計933人が手を挙げたのだ。
「オレもオレも」「ワタシもワタシ」といった具合に、応募が殺到したわけだが、高倍率のチケットを手にしたのはどんな人たちなのだろうか。
ツギツギの産みの親である、東急の川元一峰(かわもと・かずみね)さんは「ノマドワーカーや独身男性の利用が多いのかなあと思っていました。しかし、会社員(公務員を含む)が59%も占めていまして、想定外でした」という。初めての試みなので、予想していなかったことはたくさんあったと思うが、川元さんの口から「想定外」という言葉が出てきたのには、ちょっとした意味が含まれる。
いきなりだが、時計の針を2018年5月に戻そう。ツギツギのサービスを始めたのは今年の4月だったが、会社に企画書を提出したのは3年前のこと。しかし、当時はテレワークをしている人は少なく、ワーケーションという言葉を使ったことがない人も多かった。また、インバウンド需要や東京オリンピックの開催を控えていて、ホテルの宿泊費は高騰していた。
こうした社会的な背景があったので、ツギツギの企画は“瞬殺”。会社からダメ出しされ、お蔵入りとなっていたわけだが、新型コロナの感染が広がったことで、ホテルの宿泊費は大幅に下落。働き方も大きく変わったことなどを受け、企画が復活したのだ。
利用した人を年代別に見ると、40〜50代が47%もいた。ワーケーションをしていた人が40%もいたり、施設内で仕事をしていた人が68%もいたり。働き盛りの人たちの利用が目立ったわけだが、3年前に企画が瞬殺されず、実施していればどうなっていたのだろうか。宿泊施設の価格が高騰していたので、プランの料金も高くなっていた可能性が高い。
ということもあって、悠々自適な生活を送るシニアたちの間で「豪華客船で世界を一周する? それとも全国のホテルを巡る?」といった会話が交わされていたかもしれない。現役世代の多くは「全国のホテル巡りは面白そうだけど、会社に行かなければいけないしなあ。そもそも価格が高いよ。無理!」といった形で、選択肢に入らなかったはずだ。
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