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「4%賃上げ要求」は妥当か? 賃上げ騒動に覚える3つの違和感これからの「労組」に求められるものは(2/4 ページ)

» 2021年12月15日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

 そもそも定期昇給とは、年齢や勤続年数が増えるにつれて賃金も上昇していく仕組みです。そんな右肩上がりの賃金カーブを描く考え方は日本の労働者に浸透しています。しかし、年齢や勤続年数とともに賃金が上がり続けることで、少なくとも2つの弊害が生じます。

 その一つは、仕事の貢献度に対して若年層の賃金が割安になることです。右肩上がりで賃金カーブを描くということは、若年期間には割安の賃金を受け取り、将来に向けて徐々に賃金が仕事の貢献度に追い付き、やがて貢献度と賃金が逆転して割高の賃金が受け取れるようになっていくということです。これは、早めに転職をしながらステップアップしていきたいと考える若年層にとっては、不利な仕組みです。

 もう一つの弊害は、シニア層が働き続けづらくなることです。年齢や勤続年数が増えるにつれて賃金も上昇していくため、一部の“高生産性人材”を除き、会社にとっては雇用を継続するほど採算が合わなくなっていきます。それを回避するために、日本には定年制度が設けられていて、一定の年齢に到達すると合法的に雇用契約を解除できるようになっています。

 定年後の再雇用など、ツギハギのような制度をつくらなければならなくなったり、一時世間を騒がせた45歳定年制などが取り沙汰されたりしてしまうのも、元を正せば定期昇給という仕組みが大きな要因の一つです。

 中にはそれなりの賃金を維持できれば定期昇給などなくて良いから、生涯現役であることを優先して長く働き続けたいと考える労働者もいるでしょう。既に経済界の代表が「終身雇用の維持は難しい」と宣言している中で、定期昇給維持を前提に賃上げを要求し続けることが、どこまで労働者の未来にとってメリットがあるのかは疑問です。

「4%」は十分なのか

 賃上げに対する違和感の2点目は、4%の賃上げでは満足しない労働者もたくさんいる、という点です。賃金ベースが上がること自体は労働者にとって喜ばしいことです。しかし、経営側に「4%も上げたのだから十分だろう」といわれても、労働者側のイメージから懸け離れた金額では納得がいかないこともあります。

 仮に、同業他社や海外の会社で同様の職務に就いている労働者が2倍の賃金を受け取っているのだとしたら、市場の相場に見合った2倍の賃金を要求したいはずです。これは本来の同一労働同一賃金の考え方です。

果たして「4%」で多くの労働者は納得するか(画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ)

 今の日本の法制度は同一労働同一賃金とは名ばかりで、会社ごとに正規と非正規と呼ばれる雇用形態間の不合理な格差是正を唱えているに過ぎません。会社を横断した市場相場で評価され、職務の価値に応じた賃金を求めたい労働者もいるはずです。

 また、自分が出した成果に見合った賃金を求める労働者もいます。同じ職務でも平均の3倍の成果を上げているのであれば、3倍の賃金を要求することに一定の合理性はあるはずです。それが4%の賃上げ程度にとどまっていては、満足するには程遠い水準です。

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