時折、本当に起きたのかと疑いたくなるほど痛ましいニュースを目にすることがあります。摂津市(大阪府)で、3歳の男の子が母親の交際相手から熱湯をかけられて亡くなった児童虐待もそうです。あまりにもつらく、悲しい事件です。
男の子が亡くなったのは、自宅です。本来であれば最も安全であるはずの場所が、最も危険な場所だったことになります。自宅というプライベートな空間は、家族以外の人が立ち入ることのできない密室です。大人と子どもという“あらがえない力の差”と、世間の目から閉ざされた“密室”が負の相乗効果を働かせ、虐待をエスカレートさせてしまった面があるように思います。
そんな、“あらがえない力の差”と“密室”が負の相乗効果を生んでしまう事例は、大人の間でも見られます。トヨタカローラ横浜で男性社員がうつ病を発症して自ら命を絶った事件では、上司の叱責などによるパワハラが原因だと労働基準監督署が認めました。そこにも、上司と部下という“あらがえない力の差”と職場という“密室”がありました。
こうした事件は後を絶たず、11月4日にNHKは『佐川急便 39歳の男性社員が自殺 会社が上司のパワハラ認め謝罪』と題する記事を報じました。
記事によると、亡くなった社員は上司からたびたび叱責を受け「どれだけうそをつくんだ」などといわれたり、職場の机の前に40分以上立たされたりしていたとも伝えられています。“あらがえない力の差”は、上司が部下を一方的に叱責し他社員もそれを止めることができない、という不健全な関係性を生み出し、職場という“密室”の中で叱責は繰り返され、社員の命は奪われてしまいました。叱責がエスカレートしても、世間の目が届かない環境だとブレーキがかかりづらくなってしまうのです。
世の中には、自らを責めて追い込んでしまっている部下であっても、お構いなしに叱責し続け、その叱責が重大な結末をもたらす可能性を考えない「叱責妄信型」上司がいます。マネジメント上の観点からすると、叱責妄信型上司は少なくとも2つの点で決定的な過ちを犯しています。1つは、「心のダメージの見誤り」です。
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