クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

旧車ビジネスが拡大するワケ レストアでクルマは新車状態に高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)

» 2021年12月20日 07時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

近年、旧車たちにクルマ好きの関心が集まっているワケ

 そしてエコカー全盛の今、クルマを趣味として楽しむ人たちの中には旧車へと興味をシフトしている傾向が強まっている。現代のクルマは便利で快適ではあるが没個性でツマラナイと、無い物ねだりのマニアによるわがままなのかもしれないが、現代のクルマに魅力を感じなくなってきているのだ。

 米国の25年ルールという制度も、そんな日本の旧車ブームをヒートアップさせている。それは右ハンドルなど米国市場向けのクルマではなくても、生産から25年が経過したクルマは輸入して登録することが認められる、というものだ。

 米国ではJDM(ジャパン・ドメスティック・メイドの略=日本車を日本のパーツでカスタムするスタイル)など、コンパクトで高性能な日本車をカスタムして乗り回す文化があり、それと25年ルールで輸入が可能となったバブル期の高性能モデルたちの魅力が融合して、人気が急上昇したのだ。

 自動車文化が確立している欧米では、クラシックカーを文化的遺産として尊重し、それを趣味として楽しむことを認めている。ポルシェやメルセデス・ベンツは相当に旧いモデルであっても、パーツ供給は充実しており(ただし毎年のようにその価格は上昇を続けているが)、50年代の車両であっても日常的に乗り回すことを可能にしているのだ。

 一方、日本では生産終了から10年も過ぎれば、消耗品以外のパーツが徐々に欠品し、よほどの人気モデルでなければ故障してもディーラーでは修理不能になる。それにより新車への買い替えを促進するビジネスモデルだからだ。

 だが、前述の米国での人気高騰も影響してか、ここ数年、日本でも旧車の扱いを見直す動きが自動車メーカーの中でも起こっている。レストアサービスや欠品していた部品の再販売など、特定のモデルに限定した話ではあるが、以前より待遇が改善されてきているのだ。

 それでも80年代以前の旧車に関しては、日本でのパーツ供給は絶望的ともいえる状況となっている。しかしそれは日本における日本車での話で、日本国内での輸入車に関してはそこまで酷い状況ではない。イタリア車でもフランス車でも、欧州でパーツの流通がある程度あるため、専門の業者が部品を輸入販売している。

 その最も顕著なケースが、クラシックミニだ。1959年に発売されたミニは、基本構造を変えることなく2000年まで販売されたが、英国では未だに新品のボディシェルが造られ、日本ではほとんどの部品が手に入る。日本はミニの人気が高かったことから専門店も多いからだ。そのためレストアや独自の部品改良なども行われている。

 サーモスタットやウォーターポンプ、ドライブシャフトブーツといった輸入車として耐久性や信頼性に問題があった部品は日本の技術で作り直され、クルマの信頼性を高めているのだ。

フルレストアされた1965年製のオースチン・ミニ・クーパー1275S。この年式でもほぼ部品供給に問題はない、というのがクラシックミニの凄いところだ。しかしクーパーSとなると昨今の旧車人気で、価格も急上昇中。さらにここまで徹底的なレストアをすると、総費用は1000万円を優に超える(写真/菊池一仁)

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