東急ハンズCIO・メルカリCIOなどを務め、現在は独立してプロフェッショナルCDO(最高デジタル責任者)の道を進む長谷川秀樹氏が、個性豊かな“改革者”をゲストに酒を酌み交わしながら語り合う対談企画。執筆はITライター・ノンフィクション作家の酒井真弓。
プロフェッショナルCDO(最高デジタル責任者)の長谷川秀樹氏が、改革者と語り合う本対談。今回のゲストは、元政府CIO補佐官で現在農林水産省のITテクニカルアドバイザーを務める坂本俊輔氏。
2021年9月に発足したデジタル庁は、他の府省庁のIT人材にとってどのような存在なのか。デジタル庁創設の裏側から期待と課題、そしておカネの話まで、実情をざっくばらんに聞いた。
長谷川: デジタル庁が創設されたのは、誰の影響が大きいんですか?
坂本: だいぶ以前から「ITに関することを取りまとめる庁が必要だ」という議論はありました。一番大きな影響を与えたのは菅義偉元総理ですね。官房長官時代からIT政策には関心が高く、彼の意向を受けて、上席CIO補佐官のメンバーが海外動向をまとめるなど、構想を温めていました。総理になったタイミングで明確に政策提起され、たくさんの人が設立に向けて奔走しました。デジタル庁が目指すビジョンには期待しかありません。
長谷川: デジタル庁ができて何が変わったんでしょうか?
坂本: 一番の変化は、政府に自治体のシステムに対する一定の権限が与えられたことでしょう。これまでも政府CIOが自治体のシステムに意見することはできました。しかし、自治体の整備方針を指示するような権限はありませんでした。
例えば、新型コロナに関する給付金の受付システム。国のシステムと自治体のシステムやオペレーションとがマッチせず大混乱が起きて「国は何をやっているんだ」と思った方も多いと思いますが、自治体を含めたシステム全体を統制するような権限はなかったのです。
そんな中、デジタル庁の創設とともに新しい法律ができ、デジタル庁主導で作ったシステムを各自治体に展開する権限が与えられました。
政府はこれまでも権限の範囲で幾度となく自治体向けの共通仕様の策定にチャレンジしてきました。しかし、大半がうまくいきませんでした。一部のシステムを共通化しても、各自治体の基幹システムがてんでバラバラのままでは、逆に自治体内のシステム連携がうまくいかず、使えないシステムになってしまったのです。
デジタル庁がいざ効力を発揮すれば、システム切り替えのコストもかかりますし、ハレーションは起こるでしょう。しかし、国と自治体の分厚い壁を越えるための枠組みはできたと言えます。あとはビジョンを実現するためにいかに実行体制を整えるかです。
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